超絶遅速更新駄文置場 ときどき 日記
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きっと 大丈夫
2009年04月05日 (日) | 編集 |
CAUTION!!  ☆捏造注意報発令中☆

ダメだと思われた時点でお引き返し下さいm(_ _;)m







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『 きっと 大丈夫 』





「だから悪かったって……機嫌直せよ」
さっきからテーブルにひじをついてむくれている姿は学校での神からは想像しにくい。
その子供じみた様子が可笑しくて牧は笑いそうになるのをずっとこらえていたが、ついに口元を緩めてしまった。
「ほらー、全然悪いなんて思ってない」
神はそれを見逃さない、牧はこらえるのをあきらめて笑い出した。
「いいじゃないか、来られたんだから。俺は嬉しいぞ」
手を伸ばして逆毛をたてるように頭を撫でる。
「笑わなくたって……」
「はいはい、悪かったよ」
「だからー」
牧は屈んで神の顔を覗きこむ。
「出るのに手間取ったのは、やっぱり反対されたのか?」
間近に見る牧の顔は、見飽きてもいるはずなのにやはり一番好きな顔だ。
「うん……毎週なんてとんでもないって、言われた」
「お前が中学ん時まではもっと来てたのにな」
一年間をこんな風に言われ続けて過ごすのかと思うと気が重い。
「……これからが面倒くさいかも」


ことの経緯はこうだ。



「ただいま~、って……何してんの?」
帰宅した神 薫子が玄関で眼にしたものは、母と対峙している弟の姿だった。手にはスポーツバッグ。ふたりとも難しい顔をしている。
「なに? ……宗ちゃん家出?」
場違いなボケに溜め息をつきながらも母は援助を求めてくる。
「お帰りなさい。ねぇ…あなたからも言ってやってよ」
「ん?家出なら応援するわよ。 あんたなんかいらないもん」
「薫ちゃんのバカ」
恨めしそうに吐き捨ててそっぽを向いた弟は、背ばかりひょろりと伸びてしまった、本人は筋肉もついたと言い張るが、バスケ馬鹿の高校三年生だ。
普段は大人しい、いわゆる優等生で母を困らせることは皆無だ。イマドキの男の子にしては出来すぎだろうと薫子自身は思っているが、母親は全般の信頼を寄せていて宗一郎のやることに反対を唱えることはまずない。
「で?」
「で……って?」
「宗がなにしたの?」
「なにもしてないよ」
不服そうな声がぼそりと割り込んでくる。
「だってね、今日も牧さんの家に泊まるって言うのよ?」
「……いいじゃん、別に」
「良くありませんよ。毎週なんてとんでもない、先様のご迷惑も考えなさい」
「だから、ちゃんとおばさんも知ってるって。夜勤でいないから食事だって自分たちでやるし」
「やるのは紳ちゃんで、あんたは並べるだけでしょ?」
薫子はすかさず茶々をいれる。
きっと何度も言ったであろうことを母はもう一度繰り返した。
「あなた、明日は日曜だって言っても練習でしょ?」
「牧さん家から行くから」
「だから、どうしてそこまでして行く必要があるのかって言ってるのよ?」
「…………」
そう言われると宗一郎は黙ってしまう。

母親にしてみれば初めての反抗期モドキに面食らっているのかもしれない。言うことをきかない弟なんて、そういえば見たことがなかった。
探りあいながらも噛み合ってない二人の様子がどうにも可笑しい。
まぁ、無理もないかもしれない……春 真っ最中の男の子に母親の身になれと言ってもわかるはずがない。それでも外泊の許可を取ろうとする真面目さには笑ってしまう、基本的に良い子なのだ。
「いいんじゃない? 牧のおばさまが知ってるんなら」
「薫」
「合宿みたいなもんでしょ? それこそ今までべ~~ったりだったから顔見ないと駄目なんじゃないの?」
宗一郎の顔から険しさがはがれていく、単純すぎてまだまだ弟が可愛いと思えるのはこういう時だ。
「宗、でもね、あんた知らないかもしれないけど、あんたが中学生の頃から毎週毎週何回も牧さん家に泊まりに行くもんだから、お母さんはちゃんと付け届けしてるんだよ? 大食いの息子がご迷惑をおかけしますって毎月お米送ってるの知ってる?」
「……おばさんから聞いてる」
「そうすることであんたが遠慮なく来られるならって受け取ってくれてたんだって。だから感謝しなさい」
「……はい」
神妙に頷く様子を見て、母親も納得したのかやれやれというように溜め息をついた。
「まあ仕方ないけど……牧さんのご都合もちゃんと考えて、迷惑だけは掛けないようにね」
「はい」
「じゃさ、お母さん。今回は宗に担いでってもらいなさいよ」
「え?」
「高校男子は10kgの米くらい担げなくちゃ駄目でしょ? 宗おいで、台所にあるから。
あ、チャリは禁止ね」
かくして神宗一郎は片手にスポーツバッグ、肩には米10kgを担いで牧家に向かう羽目に陥った。
チャイムの音にドアを開けた牧は眼を見張り、しばしの沈黙のあと笑い出した。
「お米屋さんか?」
人の苦労も知らないで……! 暢気なオトコの発言は神の機嫌を一発でそこねた。



いつまでもふて腐れているのが馬鹿馬鹿しいのもわかっていたけれど、頭を撫でられるのが気持ちよくて神は動かずにじっとしていた。
ガスに掛けられたフライパンからはパチパチと小さな音が聞こえてくる。
「いい匂い…… 何作ってるの?」
「ん?」
ついと手が離れて、牧はガス台に戻り火を止めながら答えた。
「サンドウィッチ。お前に電話してからさ、今日は飯食うの早かったから腹が減ってきた。食うだろ?」
「……いらない、お腹すいてない」
不機嫌な声が出た、まだ駄々をこねていると思われたかもしれない。
牧は気にするでもなく冷蔵庫からタッパーを出して、次にトースターから焼き上がったパンを取り出す。眼でそれを追いかける。バスケとは違った静かな動き、牧のそんな動作を見ているのが好きだった。
パンを切るザクザクいうと音の後にテーブルに皿が置かれ、鼻先に漂うベーコンとトーストの芳香に心をうばわれたが、耳が水音を捉えて振り返るとフライパンを片付けている牧が見えた。次に棚からマグカップを取り出して冷蔵庫の扉に手をかける。
「何飲む?」
牧の手元から顔へと視線を移す。
「牛乳か?」
神は背が高くなるのを嫌がって一時期牛乳を飲まない時があった。いまだにそのことをネタに時々からかわれる。牧はにやりと笑ってみせた。
「……いらない」
また不機嫌な声になった。

ベーコンと作り置きのコールスローサラダを挟んだだけのサンドウィッチ、それでも牧が食べる物は何でも美味しそうに見える。子供の頃にはたくさんあった好き嫌いが、つられて口にするようになっていつの間にかなくなっていた。そんなことを考えながら規則的に咀嚼を続けるあごの動きに気をとられていると、がさりとした感触が唇に当たった。
「ほい」
素直に口を開けしまい、差し込まれたパンをがりりと齧り取る。ベーコンと慣れ親しんだドレッシングの味が口に広がった。
「食えるだろ?」
「……うん」
カットした半分を渡されて黙々と食べた。
「明日は?何時だ」
「ん? 9時スタートだから、8時には出ようかな。牧さんは?」
「俺は午後からだ。大学生ってのは朝が遅いな」
「ふぅん」
去年まで牧の予定は自分の予定だった。すれ違いにもいいかげん慣れたけれど、それでもパズルのピースが合わないような、何か足りないような気持ちになる。
「風呂は?」
「入りたいけど、いい?」
「沸かし直せよ」
「はーい」
皿を下げながら話を続ける。
「パジャマ、新しいヤツだって言ってたぞ」
「ねえ……おばさんに言って。パジャマはもういいって」
牧の家には、おそらく他人が見たら4人家族だろうと思われるほど神の物が揃っている。子供の頃からよく泊まっていた神のために色々と揃えてくれるようになった。それがどれだけ申し訳ないことか、もちろん今の神には良くわかっている。
「前にも言ったけど、パジャマはあの人の道楽なんだから付き合っとけよ」
「でもさ……」
「どうせすぐに脱ぐけどな」
「牧さん!」
こともなげに言われて、つい声が上がる。
ブランドのことはよくわからないが、牧の家はそういう物で統一されているような家ではない。それでも季節ごとに変わるカーテンやカバー類は落ち着いた色合いの綺麗な布で、同じように肌触りの良いパジャマが神にも用意されていた。
布道楽だと牧は言う。
「綺麗なプリントが出ると買いたいんだと。俺が縞か無地しか着ないからそれだけで親不孝呼ばわりだ」
「牧さん、着ればいいのに……」
「小学生の頃は着てたけどな、嫌なこった」
確かに今の牧があれを着たら別の職業の人に見えなくもないと想像していたら、背中をどんと突かれた。
「お前が何考えてるかちゃんとわかってるぞ。ほら、早く行け」
そう言って流しの方へ戻りかけ、思い出したように言葉を継いだ。
「ああ、今年卒業の先輩からバイトを譲ってもらえることになったから。少しは収入ができるってことで、おふくろにもう一度話してみる」
「バイトって……練習は?」
「高校と違って授業がイレギュラーだから時間作れるんだよ。心配するな」
「でも」
「いいから。ほら、風呂行ってこい」



湯船につかりながらぐうっと伸びをする、つられて溜め息が出た。
牧が家を出ようとしているのは、ここで会うのが後ろめたいと言う自分のせいだ。
子供だった自分たちには他の方法が思いつけなかったというものの、自分の家のように物の場所や習慣を知るほどの月日をこの家で過ごしていた。
恵まれすぎていると来る度に痛感して、そして離れるとすぐにまた不安になる。つくづく馬鹿だと思う。
自分の親ならここまで寛容ではないだろう、牧の母親が見ぬふりをしてくれているのはどうしてだろうと何度も何度も考えた。知られているのなら全部を話して聞いてみたい欲求にも駆られるけれど、今は変につつき回さない方がいいような気がすると牧は言う。
どうなるんだろう、どうすることが一番いいのかと、考えが先に進まないまま時間だけが経っていく。
牧がバイトを始めてこの家を出る。それでいいんだろうか。
自分のわがままが牧のバスケに影響したとしたら……それだけは嫌だ。これだけははっきりとわかることだった。


ガタリと音がして牧が洗面所に入ってきたらしい。何かを片付けているのか、しばらく物音が続いている。
「牧さん」
声をかけてみる。
「何だ」
硝子のむこうに影が映った。
「あのさ……」
言いたいことはわかっているのに上手く言葉がみつけられずに口をつぐんでしまう。
しばらくしてから牧の声が聞こえた。

「待ってるから。 早く上がってこい」

柔らかなこの声が聞けるのは自分だけなのに……

「うん、先に行ってて」

こうして言葉を交わせるなら、それで充分のはずなのに。
会って、温かい手に触れて、何が心配だというのだろう。
この気持ちをずっと持ち続けられるように、不安が心に忍び込んでこないように、神は自分に言って聞かせる。


――― そう、きっと大丈夫 ―――









2008/10/26
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毎度夢見がちな牧神でどうも……(^^;)
色々作り込んでいく自分に自分で驚いてます←ヲイ☆
お姉さん薫子は神より7つ上のOLさんです
それにしても、この『きっと大丈夫』って
嵐の歌のタイトルと同じだったんですね(笑)
ワタクシ疎いもんで全く気がつきませんでした( ̄▽ ̄;)

ここまで読んで下さった方に感謝を!
お付き合い下さいまして
本当にありがとうございました




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