超絶遅速更新駄文置場 ときどき 日記
スポンサーサイト
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2009年07月23日 (木) | 編集 |
不安が全ての扉をとざして……





『 選択 』




一年なんてすぐだと何度繰り返しただろう。
週末には会おうと交わした約束も、どちらかの都合が悪くなって叶わないことの方が多かった。
練習、試合、練習……大学と高校。噛み合わない予定。
じゃあ来週。ああ、また来週な……どんどん意味を成さなくなる約束。
牧の周りに自分の知らない人物がどれだけ増えただろう。時折雑誌に掲載される写真の横には、必ずあの人がいる。

会えないことが当たり前になって……気がつくと心の中で問いかけている。

牧さん…… 俺たちはこれからどうなるんだろう

牧にはわかっているんだろうか。
会えなくても平気なんだろうか? 
会わなくても平気なんだろうか

牧さん…… 今でも俺が好き?

子供の頃の可愛さはとっくに消え失せた。性格だってかなりきつくなった、自覚は充分にある。こんな自分は牧にとってどれだけの価値があるのだろう……
牧も自分も 男で……こうして続いている関係は、もしかしたら自分を思いやってくれているから? 
……そう、昔から牧は優しい人だった。
それでも牧が好きだ。
自分を見て、笑って、抱きしめてくれる腕は誰にも渡したくない。
自分の執着を、牧との未来を思い、胸が詰まりそうに苦しくなる。



―――続く はずが ない―――



今なら忘れられるだろうか
今なら?
このまま終わりになってしまえば、そのうち平気でいられるようになるんだろうか……
いつの間にか芽吹いた思考が日に日に育っていく。
今しかないのかもしれない
今、離れてしまわなければ……きっともっと執着は強くなる。諦めきれない想いを牧にぶつけてもきっと……牧はどんな眼で自分を見るんだろう
駄目だ……駄目だ…… そんなのは絶対にイヤだ

次々と浮かび上がってくる不安は、声が聞けたなら、顔を見さえすれば、すぐに霧散した。
それでもそれは、少しずつ少しずつ確かなものに姿を変えて神の背中を押し続けた。





そして





入道雲がウロコ雲に変わり空が高く澄んだ季節に、神はひとつの道を選んだ。





声はちゃんと出せていただろうか。
振り返って牧が聞き返してきた。
「ん? なんて言った?」
一呼吸おいてから神はもう一度同じ言葉を繰り返す。
「海南大には、行かないことにしたんだ。心理学の勉強がしたいから……」
「今からか? そりゃ大変だ」
驚いている牧から視線を外す。
「前から考えてたけど……なかなか会えなかったから…話せなかった」
「そうか。じゃあもう引退か?」
「ううん最後まで。バスケは最後までやりたい。冬まで……」
「う~ん、両立はかなりキツイな。まぁお前なら、イケそうな気もするがな……頑張れよ」

牧の部屋では到底無理だとわかっていたから、外で会う約束をした。
覚悟を決めたつもりだった。それでも久しぶりに牧の笑顔を見て、心が揺れる。
向こう側に自分たちと同じ高校生だろうか、ふざけ合っている男女が見える。腕を絡ませて、笑い声が聞こえてきた。羨ましくて……牧に触れたくてたまらない。
今日言わずにいれば、まだ ……そんな欲がちらと浮かぶ。
このまま会う回数は減っていくかもしれない。それでも何も言わなければ……
駄目だ、決めたんだ。
今日。
今日言ってしまわなければ……
どんどん冷静でいられなくなる自覚がある。今日を逃したら絶対言えない、そう思って自分を励ました。
今、つらくてもきっと……

「なぁ、大学でバスケは? 止めちまうのか?」
耳鳴りがする。
「……そういうことに、なるかな……」 
普通の声が出せているのか?
「うーん、それだけは残念だな…… お前ともう一度組みたかったよ」
牧は怒りはしなかった。
昔からどんな無理を言っても怒られたことはなかったと、今さら思い返していた。
「しばらくはお前も辛いんじゃないのか? でもまぁ、部活じゃなくてもバスケはできるか……」
牧の声が遠くに聞こえる。
静かに息を吸い込む
「……牧さん……距離を、置きたいんだ……しばらく……」
誰の声だ……掠れた声。
「神?」
「もう…会わない」
「…お」
「離れたい」
これは自分の声じゃない。
両肩をつかまれて瞬間顔を見てしまった。
射るような視線に慌てて顔をそむける。
「なにが…… 何でだ!?」
牧の眼を見た途端にあれこれ考えた理由は全部消し飛んだ
まともに答えられるはずがない、うなだれたまま闇雲に首を振る。
「こっち向けよ。頼む、ちゃんと顔を見せてくれ!神!」
「離れる! 牧さんと、もう離れたい!」
「神」
「もう離れないと!」
必死になって言葉を繰り返していた。
自分を捕えていた指の力が弱くなる。それを振りほどいて神は逃げるように走り出した。

耳の奥で牧の声が反響している。乱れた呼吸と心臓の響きと……それを振り棄てるように全力で走り続ける。
家に駆け込み、階段をかけあがり後ろ手に閉めたドアに寄りかかると、脚の力が抜けてずるずると座り込んだ。


言ってしまった。
これで良かったのか?
もっと他に……
もっと何か……
もっと…もっと……
いまさら考えてもどうしようもないことが浮かんでは消えていく。
肩に残る牧の手の感覚


終わったんだ……


改めて現実を知る。
二度と、会えない
もう……二度と触れることはない
ぎりぎりと痛む胸を押さえようとして、震えが止まらないことに気づいた。

牧さん……
牧さん、 牧さん、牧さん 牧さん牧さん!!

二度と答えは返ってこない

牧さん……  

ずっとずっと好きだった……



溢れる涙を拭う力は、もう残ってはいなかった。







スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。