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2009年07月23日 (木) | 編集 |
神が最上級生になって少し経ちました。





『 距離 』




海南大の試合を見に行った。
この試合は新人戦と呼ばれるもので、春のトーナメント戦とは違い牧がメインで起用される、いわば海南大でのデビュー戦だ。
日曜の練習をこの日だけは監督に頼み込んで短縮してもらい、体育館に駆けつけた時にはすでに試合は始まっていた。満杯の観客席にはおそらく雑誌の取材だろうと思われる人の姿もあちこちに見られ、それだけ注目度の高さがうかがわれる。


ほんの数カ月前まで同じコートに立っていた人は、さらにその存在感を増していた。
「牧さん、かっけ~~~」
そう、清田が漏らした声が全てだ。
「ダンプからブルドーザーにレベルアップのついでにスピードも増って、ど~なの~」
隣からため息まじりに遠藤の声が聞こえる。
神も息を詰めて牧を追い続けた。
その姿にあこがれ、追いかけ、今でも目指している……
牧さん。
髪が短くなっている。
この前会った時からの牧の変化に、改めて時間の経過を教えられる。
気にするな、そんなことは些細なこと……自らにそう言い聞かせた時にアクシデントが起こった。
海南大の選手が転倒した。思いのほか怪我が大きく、どうやら継続は無理のようだ。
メンバー交代で姿を現したのはずいぶんと小柄な選手だった。
「あれが二年の風間さんだよ。岡崎さんと名コンビだって言われてる」
小菅が清田に説明している。
自分たちが一年だった時のキャプテン、岡崎も海南大でバスケを続けている。その岡崎と風間の息の合ったコンビプレイは絶妙と評判を呼んでいる。
「うっわ、ちっちぇ~!」
「お前がゆーな、お前が」
「お、俺はデカくなるっス!」
「いつだよ」
「これからっ!!」
遠藤と清田が漫才もどきの会話を始めても神はコートから視線を外すことができなかった。
牧の動きとクセと、状況を見事なほど読んで風間は動き、それに触発されて牧の動きも格段に良くなっている。他の選手にもベストポイントでフォローを入れているその姿は、二年生の貫録だろうか試合を楽しんでいるかのようにも見える。
すごい、と思った。
自分が牧に対してそうありたい、風間はそういう動き方をした。
感嘆と、羨望と、
胸にちりりと感じた痛みは ……嫉妬……? 
僅かの間、初めて神はコートから視線を外した。



「神さん早く早く!!」
清田に引っ張られるように試合後の選手控え室に向かった。
ドアの前は人でごった返していて、フラッシュの中心に牧はいた。
「まっきさぁ~ん」
ぶんぶんと手を振る清田を遠藤が抑え込む。
「よぉ、来てくれたのか」
「牧さ~ん」
取材を終えて照れたように笑いかける牧に、清田は飛びついていく。
高砂も顔を出して、懐かしい顔ぶれで騒いでいるところに岡崎と風間が戻ってきた。
「お疲れ様です」
「よっ、元気か~?」
混ざろうとする岡崎を横目に、牧の背中を拳固でつつき風間が言った。
「牧、同窓会もいいけどさ、今日の約束忘れんなよー」
「イテ…了解、すぐに行きます」
苦笑している牧に小菅が尋ねる。
「牧さん、これから用ですか?」
「スマン、付き合えなくて悪いな」
申し訳なさそうに詫びて、牧はドアの向こうに姿を消した。自分にだけわかるように目配せはくれたけれど、それでも牧が違う世界に行ってしまった感覚にとらわれて神の気持ちは沈んでいく。
「風間が牧をエラくお気に入りでな、バスケ感覚が合うんだと。おかげで俺は最近ふられっぱなしだよ」
岡崎の言葉を聞かなくても、見ただけでそれは良くわかる。練習を重ねて合わせていく《息》もあるが、最初から合う相手なら自然体で向き合える分どれだけやりやすいだろう。
今日の牧の伸びやかなプレイはまさにそれだった……

大丈夫、でもそれだけだ。
自分に言い聞かせる。
来年は自分がそこに行く。
再び牧と同じコートに立つ日を神は思い描こうとした。






 

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