超絶遅速更新駄文置場 ときどき 日記
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episode 3
2009年04月05日 (日) | 編集 |
〈可愛い〉の意味は……?





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《 episode 3 》






眼を開いてすぐに伸びをしようとした俺は、動かしかけた手を慌てて固めた。
嶺がいる!
隣には珍しく、まだ高嶺が寝息をたてていた。
常日頃自分より休むのは後で、朝は早いこの男がちゃんと休めているのかと気になりながらも、習いのように自分はそれを受け入れ、もちろん高嶺が何かを言うはずもなく……
そのせいか高嶺が寝ている姿を目にすると、ほっとするような心持ちになる。

そっと顔を向けて気持ち良さそうな寝顔を窺ってみる。
高嶺の顔といえば、まず睫毛だろう。
密に揃っていて長く緩やかにカーブを描くそれは、同期の五十嵐恵子にして「睫毛だけは高嶺くんと取り替えたい」と言わせる超弩級の美しさなのだそうだ。
その感触を自分は知っている。 触りたい、と思う。
我慢だ。
動けば起こしてしまうだろうと気持ちを抑える。
思い直し視線を少し落として見れば、今度は頬の髭が気になり始める。
わずかに頭を出しているそれはざらざらと掌にくすぐったい。
触りたい気持ちがむくむくと頭をもたげてくる。
我慢だ。 
布団の中で手を握り締める。触れれば当然、高嶺は起きてしまう。

じっと身を固くしている自分に気づき、そっと息を吐き出した。

高嶺の呼吸は俺よりも深く、ゆったりとしている。
布団の上から微かに上下する胸の動きを捉えようと眼を凝らす。
大きくて広い胸。
腕を回してその大きさを確かめたい、と思う。
それも今は我慢だ。
そうだ、これなら大丈夫だろうか……
そろそろと注意深く足を近づけて、より暖かい場所を探り当てる。
高嶺の温もりの範疇に片足を置いて、高嶺の呼吸を追いかけてみる。
ゆっくり…… 深く…… 
そのまま、俺は再び眠りに落ちていった。




呼ばれたような気配に目を開くとベッドの脇に高嶺が立っていた。既にシャツにセーター姿で、一瞬さっきのことは夢だったのかと思う。
「どうしようかと思ったんですが俺も寝坊をしてしまって……一度声を掛けてみました」
「…ああ」
俺の顔を覗き込んで高嶺は言った。
「ありがとうございました」
「え?」
「隊長も二度寝、ですよね? 俺が寝てたから動かないでいてくれたんでしょう?」
「…なんで……」
言い当てられて驚いていると、くすりと笑って高嶺は続けた。
「いつもなら起きるとすぐに元気に伸びをして、可愛い欠伸をして、スリッパも履かずにベッドから離れてしまわれるので。 そこまで動かれたら、さすがに俺も気づきます」
可愛いは余計だろうと思ったが、それよりも自分の日常をつぶさに観察されている気恥ずかしさに何も言い返せず、伸びも欠伸も割愛して俺はすり抜けるようにベッドから下りて洗面所に向かった。


洗面所から戻り、時計を見れば11時を少し回っている。
テーブルにはお茶が用意されていて、高嶺は食事の仕度をしている。時間以外はまったくいつも通りだ。気が付けばスリッパも……いつの間にか突っ掛けている。そういえばトイレから出た時に置いてあったと気づく。
湯呑みを手にすると声が掛かる。
「寒くないようにして下さいよ」
遅くなった分、今日の予定を組み直さなくてはとぼんやり思考を巡らせるが、それにしてもさっき我慢したことがやたらと気になりだした。
「嶺……睫毛に触ってもいいか?」
いきなりの言葉に高嶺は驚いて振り返ったが、手を休めると俺の前に顔を持ってきて「どうぞ」と目を閉じた。
そっと手を伸ばす。
肌に触れないように、毛先を指でなぞっていく。
睫毛はとても柔らかくて触れられるままにしなるのに、跡が付くことは決してない。指が離れると同時に整然と元に戻っていく。
まるで持ち主の気質そのものだと一人納得する。
様子が見えているかのように、高嶺は目を開けて聞いてきた。
「次はなんです?」
その言葉に誘われて手を頬に滑らせる。
「髭、は剃ったか……」
高嶺はさもおかしそうに笑った。
「これに関しては次回ですね。起きてすぐに剃ってしまいました。……それから?」
問われて俺は躊躇する。
目の前の身体に腕を回す、そんな簡単なことができずにいると、やがて手がすいと伸びてきて背に当てられた。
「寒くないですか?」
この好機を逃すまいとぶつかるように腕の中に納まって、自分もすかさず腕を巻き付けた。
「隊長?」
これだ、これ。
厚みがあって、大きくて、温かくて、弾力があって……
望んでいた感触に満足して胸に顔を擦り付ける。
宥めるように背を叩いては高嶺が何か言っている。それも体内で共鳴する音にしか聞こえない。低めの心地よい響きを聞きながら適当に相槌を打つ。
高嶺はまだ何かを話しているが、無視を決め込んで俺は気持ちよく胸に顔を埋めていた。


ぺちり!
突然尻を叩かれ驚いて顔を上げれば、目の前に難しい顔があった。
「隊長、本当ですね?」
「…………?」
何のことだかわからずに、答えを探すようにぐるりと視線を泳がせた俺は、目の端で高嶺の手がガスのスイッチを消すのを捉えた。と、次に子供のように抱き上げられる。
「嶺!?」
「何を言っても駄目ですよ、手遅れです」
運ばれてベッドに下ろされて、大体の察しはつくというものだが、それにしても全然話がわからない。
側に上がってきた高嶺を慌てて押し留める。
「っ待機だ、説明を要求する」
「やっぱり…… 何にも聞いてなかったんですね」
はぁ…… と盛大な溜め息と共にその場にどかりと腰を落とす。
俺が何かやったのだろうか? 
隊長は処世術のひとつも覚えとかなアカンと、以前シマに失敗をごまかす時には笑うのだと教えられたが、それはこういう時のことを言うのだろうか? 
とりあえず笑ってみたら、高嶺は頭を抱えてしまった。
申し訳なくなって、取り繕うように訊いてみた。
「嶺、すまない ……何て言ったんだ?」
「あの状態では困ることになりそうなので、離れてもらおうと色々と言ったんですが……あなたときたら、お腹が空いたでしょうと言ってもまだいい、すぐに食事にしますと言ってもまだいいって」
順序立てて説明されても ……そうだったか?
「どう言っても駄目なので、もうこうなったら、俺は非常に空腹なんですが隊長を頂いてもいいですか、と伺いました」
ああ、それで俺が頷いたという訳か。納得した。
高嶺の顔がぐっと近付いた。
「どうですか? ……いい?」
それにしたってそんなに困った顔で見つめてくるなんて反則だ。高嶺の視線に気圧されて、俺は思わず首を縦に振っていた。
待ちわびていたように唇が触れてくる。眼を閉じて髪に指を埋め…たところで初めて気が付いた。
「嶺、お腹が空いた」
「却下です!」
やはり手遅れか。
温かい手が潜り込んできて肌を探る。こんなに余裕のなさそうな高嶺は本当に珍しい。そんな様子を見ていると……こういう感覚を何と言えばいいのか。

そうか、これが「可愛い」か!!

言われてばかりの言葉の意味が初めて理解できたような気がして、俺は嬉しくなった。
声に出して高嶺にも言ってやろうと思ったが、もう駄目だ。
こちらもそんな余裕はなくなって、堪えきれずに目の前の身体にしがみついた。










2008/01/20
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最初はね、嶺さんの寝顔を見て色々考える
隊長のお話を書きたくて始めたんですが……
だんだん嶺さんがお預けをくらう話に(*゜▽゜*) 
後日、真田さんは誰彼構わずつかまえては
「高嶺は可愛いと思うだろう?」と同意を強要(笑)
シマには怒られるし、一ノ宮さんには緊急副隊長会議招集されちゃうし
嶺さんは散々だったそうですよ……





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