超絶遅速更新駄文置場 ときどき 日記
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episode 2
2009年04月05日 (日) | 編集 |
真田隊長にのびる魔の手が……( ̄m ̄)





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《 episode 2 》






そのキスは微かに血の味がした。


離れてしまった高嶺を、真田は不思議そうな顔で見る。
その唇を注意深く観察すれば確かに割れて、くっついた形跡があった。
「割れてしまったんですね」
やわらかく下唇をなぞっていく指をいたずらな舌がぺろりと掠める。
「隊長」
たしなめられてバツが悪いのか、真田は至極真面目な顔で答えた。
「朝、走っている時に割れた。パリッと音がしたぞ」
「それは痛そうですね」
「舐めていたら治った」
「ちょっと待っていて下さいね」
そう言って高嶺は台所のキャビネットの奥から瓶を取り出し、テーブルに置いた。
スプーンで中味をすくってから指先に少し取り、面白そうに覗き込んでくる真田の唇にそれを載せる。
「嶺、これは何だ?」
「蜂蜜です。応急ですが……リップクリームの類はお持ちじゃないですよね」
「以前誰かに貰ったが、走っている時にスースーするからつけなくなってしまった」
「それでは後で買ってきましょう。メントールタイプじゃなければいいですか?」
選択肢があるのか、わずかに首を傾けて一生懸命考えている様子だ。
レスキューを離れると、疑問に思うほど判断が遅いこともある。
高嶺は瓶を片付けながら気長に待った。
「何かご希望が?」
「以前薬局に行った時、随分と種類があったように思う。実物を見て決めたいが」
「それでは後で一緒に買い物に行きましょうか」
「ん、承知した」
ひとつ大きく頷くと、真田は読みかけの新聞を持ってさっさと定位置のラグに行ってしまった。キスへと移行した雰囲気は霧散しており、そんなこともすっかり忘れてしまったようだ。
高嶺も無言のまま、やりかけの台所仕事を再開した。

ところが五分と経たないうちに、真田が戻ってきて高嶺のすぐ横に立った。
何ですか、と聞くと言いにくそうにちらと見上げて口を開く。
「もう一度付けてくれ」
「舐めちゃったんですね」
「甘くて美味しかった」
そうなるだろうな、と思ってはいたが……
「あなたがこれを薬と認識することはないんでしょうね」
やれやれと思いながら、ちょっと意地悪を言ってみる。
「オリーブオイルもありますよ」
「……はちみつがいい……」
高嶺は笑いながら瓶を取り出してもう一度、今度は少し多めに塗ってやった。
「出掛けるまでこれで持たせてくださいね、隊長」



昼過ぎに二人でショッピングモールに向かう。
ここに来れば真田が必ず立ち寄るアイスクリームショップを、持って帰りたければ後にしましょうと言い聞かせながら通り過ぎようとした時、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「真田くーん」
「イガさん」
ヘリ隊の機長、五十嵐に手招きされた真田は嬉しそうに店内へ足を踏み入れる。
「イガさんも休みなのか? この辺りで会うのは珍しいな」
「お手軽にリフレッシュしようと思って。あなた達は買い物?」
そう言ってから、後ろに立つ高嶺に視線を流す。
含みのある視線には気付きもせずに、真田は買い物にやって来た経緯をとうとうと説明している。
「ふぅん……それなら私が一緒に選んであげるわ、ね?」
五十嵐の申し出に多少の違和感を覚えないでもなかったが、素直に喜ぶ真田を見て、高嶺はドラッグストアには二人で行ってもらうことにした。
自分はその間に食材の買物をすれば時間の節約にもなるだろう、そう思って季節のフレーバーを制覇した二人を見送ってから一人隣接のスーパーへと足を向けた。



待ち合わせに決めたコーヒーショップに高嶺が入っていくと、二人は既に奥の座席で何やらがさごそとやっている。
「遅くなりました。……何をなさっているんですか?」
「選べないって言うから、気になったのを全部買って試させてるのよ」
その大胆な手法には驚かされる。
「では、不要になった物はどうするんです?」
「大丈夫よ、私が引き受けるわ」
「五十嵐機長……」
「あら、いくら私だって真田くんが使ったって言って高値で売るなんてことしないわよ」
「機長?」
不敵な微笑を浮かべる五十嵐の真意を確かめようとするが、すんなりとかわされてしまう。
「真田くん決めた? それがいいの?」
真田が手にしているのは、ほんのりと桃の香りのする軟らかいスティックだ。
「細身のタイプだから、出しすぎると折れちゃうわよ。ちょっとだけ出して使うのよ、いい?」
「了解した」
じゃ、と他の不要になった物は無造作に袋に戻される。
「それは、どうなさるんです?」
するりと座席を離れると、五十嵐は押さえた声で告げた。
「桃の匂いのするぺたぺたの唇にちゅうできるのはキミだけなんだから、黙って見送りなさい」
言いざまにハイと高嶺に伝票を押し付けて五十嵐は滑るような足取りで店を後にした。
テーブルの上は既に片付けられていて、コーヒーカップだけが残っている。
改めて伝票に目を走らせてみると……
ハンバーグサンドとカルボナーラ、シーフードドリア、シーザーサラダにフレンチフライ、モカパフェにチーズケーキセット……この短時間で? さすがと言うべきなのか、全く五十嵐はツワモノだ。
「隊長も召し上がったんですか?」
振り返ると聞いているのかいないのか、真田は無言で唇をむにむにとこすり合わせているだけだった。



それから数日後、ヘリ隊の副操縦士・富岡の物言いたげな視線を何度か感じたが、その内容を聞くのが恐ろしいような気がして、高嶺は心中で詫びながらもあえて気付かない振りをしていた。
振りをしていても狭い基地内の出来事は嫌でも眼に入る。
最近唇のケアに気を使っている奴がやたらと増えたように思うのは、どうやら間違いではなさそうだ……
唇をてかてかさせている一ノ宮を捉まえて、文句の一つも言いたくなる。
「一ノ宮さん、あなたまで。 一体何をやってるんですか?」
「んー?ナニって……ああコレかぁ? コレはさっき真田がつけてくれたんだぜ? カサカサは駄目ですよーだと。カワイイの使ってんのな、アイツ」
自分の唇を尖らせて、さも可笑しそうに話す姿を見て高嶺の口から溜め息が洩れる。
そうだった、この人は特別だ……
眉間を押さえた高嶺を見て、一ノ宮が声を上げた。
「真田―、お前ンとこの副隊長が頭かかえてンぞ」
すぐに真田が真剣な面持ちでやって来た。
「高嶺、どうした」
「いえ、何でも」
「嶺」
「本当に。ご心配には及びません ……すぐにコーヒーを淹れますね」
そう言って高嶺はキッチンスペースへと行ってしまう。

わずかに躊躇った後に、真田は高嶺の横に並び立つ。そして正面を見たままの姿勢で話し出した。
「この前イガさんに注意を受けた。ケアを怠るのは言語道断だと、強く言われた」
「……は?」
いきなりの話題に面食らう。
「少しはましになったのではないかと思う」
「先日ご一緒した時の話ですか?」
「そうだ」
真田の表情は硬い。
「感触が好ましくなかったのだろう?」
「感触……?」
「……だから悪かったと」
「はい?」
上手く伝わらない言葉にしびれを切らして、真田は高嶺に向き直った。
「だからお前はキスを止め…」
はた! 高嶺の手が慌てて真田の口を塞いだ。
さっき一ノ宮が出て行った気配があって、多分ここには誰もいなかったはずだが……恐る恐る振り返った時、ちょうど佐藤専門官の姿がドアの外に現れた。ひそかに息をつき、胸を撫で下ろす。
「お疲れ様です」
部屋に入ってきた佐藤に労いの声を掛ける。
「ああ、お疲れさん」
「今、コーヒーが入りますが、いかがですか?」
「おー、いいね。頼むよ」
佐藤はラックの雑誌を物色してからソファにどしりと腰を下ろした。


カップを用意しながら、高嶺は声を落とした。
「もう一度割れてしまってはいけないと思ったからです」
「がさがさの唇では勝負にならないとイガさんに言われた」
納得できないらしく尚も憮然とした表情のまま、真田はぼそりと答える。
高嶺は静かに話しかける。
「一体誰と勝負するつもりだったんです? ずっと一緒にいるのに…… そんな相手はいませんよ」
微笑んでみせると、真田はもう一度高嶺を見て、決まり悪そうに小さく肯いた。
この男をとんでもなく可愛いと思う自分に呆れながらも、もう少しと欲を出して、高嶺はわざと聞いてみる。
「そうですね。でもすべすべの唇がいいなら俺も何かつけましょうか…… オリーブオイルとか?」
「はちみつがいい」
予想通りの反応に笑いながら、向こうの佐藤にも声を掛ける。
「隊長は蜂蜜を入れるそうですが、専門官はどうなさいます? お疲れならたまには違う糖分もいいですよ」
「ほう、蜂蜜? 試してみようかな」
「わかりました」
カップを盆に載せ、小さな容れ物に黄金色の蜂蜜を用意する。
「運んで頂けますか?」

反応のない真田を不思議に思って見れば、その視線は蜂蜜を取り分けたスプーンに注がれている。
高嶺が口元にそれを差し出すと、柔らかそうな唇が嬉しそうにぱくりと食いついてきた。









2007/11/29
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唇のはちみつを舐めちゃう隊長のお話が書きたくて始めたのに
けーこたんの登場でこんな展開にっΣ(`□´;)
けーこたんは、一本ずつリップクリームを唇に当てている
隊長のお試し証拠写真を撮ってると思います。
それを付ければ一本¥1000は固いね☆





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