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ふたつめの約束
2009年04月05日 (日) | 編集 |
いやーん…らぶらぶ♪

こんな30オトコがいるもんか―――





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『 ふたつめの約束 』





休みと快晴が重なる、それは貴重な一日だ。
高嶺は一通りの家事を終えてから、もう一度そっと寝室を覗いてみる。
やはり起きている気配はない。
真田は本当に良く眠る。
夕食後に静かだなと思って振り返ると、ストレッチの途中で開脚前屈のまま寝ていたり、ずらせば良いものをソファのクッションの間に窮屈そうに丸まって寝ていたり、おかしな寝姿を何度も眼にしている。
基地での仮眠時に見せるスイッチが切り替わるような目覚めは、ここではない。
気持ち良さそうな寝顔を見ていると起こすのが可哀想に思えて、いつもはそっと体勢を直してやっているのだが、今日ばかりはそうも言っていられない。
本意ではないが致し方ない、部屋に入りベッドの脇に立って静かに声を掛けた。

「みね……?」
「隊長、朝ですよ」
ごそごそと中央部に移動したということは拒絶なのか、それとも座る場所を空けてくれたのか。
高嶺は腰を下ろして手を伸ばし、髪に触れた。
「すみませんが起きて頂けますか?」
その問い掛けに、真田はもぞりと一度だけ動いてみせる。
布団の中でぐずぐずしている真田はとても可愛い。可愛いが今はそれを見て喜んでいる場合ではない。
小ぶりな頭の下に片手を入れて持ち上げると、高嶺はそのまま自分の膝に載せた。
急に動かされて不満気に唸る真田の頭を、マッサージでもするように少し指先に力を入れて撫でる。
「隊ー長ー、頼みます。今日は起きて下さいな」
「うー」
それでもまだ抵抗するかように腿の付け根に顔を押し付けてくる。
「これは困るんだけど……」
状況の打開を図って、高嶺は新たな提案を試みる。
「お腹空いたでしょう? 召し上がってからもう一眠りしたらどうですか?」
「んー?」
真田の目蓋がうっすらと開く。
「今日は頂き物のメロンがありますよ。さ、起きて下さい」
好機を逃さずに気を引く話を振ると、むくりと真田が頭を上げた。
こうして高嶺は、無事に朝の一山を越えたのだった。

真田の朝食を並べ、自分は残った仕事に取り掛かる。
たとえ一人でも真田は新聞を読みながら食事を摂る事はない。もくもくと良く噛んでひたすら食事に集中する。
食後のお茶に間に合わせようと残りを大急ぎで片付けて戻ると、なんとなく真田の元気がないように思えた。
「どうしました? 具合でも?」
心配になって声を掛けると、ぽつりと口を開いた。
「終わりになってしまった」
見ればテーブルの上には真田お気に入りのジャムの瓶。
それは露地物の小さい苺を『苺の子供だ』と言って珍しがる真田に、ついジャムを作るのに適していると説明したが為にせがまれて自分が作ったものだ。
「ああ、結構長く楽しめましたね」
高嶺の声に頷きはするものの、その表情は晴れない。
「そんなに気に入って下さったのなら、また作りましょうね」
途端に真田の顔がぱっと輝く。
「本当か?」
「ええ」
「それなら苺の子供を買いに行こう」
申し訳なさそうに高嶺は言う。
「隊長……苺は今年はもう終わりです」
「そうか」
「りんごでは駄目ですか」
「そうだな」
「オレンジが出回ればマーマレードも作れますよ」
「そうだな」
淡々と答えているものの、その落胆ぶりが高嶺には良くわかった。視線がじっとジャムの瓶に注がれているのを見ればあくまでも『苺のジャム』らしい。
「隊長。苺のジャムはまた来年、作りましょう」
高嶺の言葉に真田がふいと顔を上げる。
「来年…」
「はい、また来年」

次の年、はたして真田はここに居るのだろうか。
高嶺は、そして真田自身もそう思った。
インドネシアから戻った際の辞令を思えば、羽田に身を落ち着かせていられるのも長くはなさそうだ。
一生をレスキューに懸けている真田なら、その為にはどこへでも行くだろう。
その真田に付き、手助けができればいいとは思うが、高嶺には高嶺のグラウンドがある。
二人ともいつかは離れる平行な道を、それぞれに歩いているような気がしていた。

「来年、か…」
おそらくは互いに同じ想いを抱いていると気付いているのだろう。
それでも不確かな未来を憂える気持ちは皆無なのか、高嶺は顔を覗き込んできてにこりと笑った。
「はい。 隊長、たとえ隊長が羽田にいなくなったとしても、例えば、そうですね……例えばですよ? 俺が島に帰ったとしてもジャムくらいは作りに来られます」
「嶺……」
「また二人で苺を買いに行きましょう」
そんなことが本当にあるのかと真田には思えたが、この男が言うのだから信じて間違いはないのだろう。
地理的に離れることは終わりではないのか?
「わかった……来年だな」
「はい」
訳もわからないまま、胸も目頭までが微かな痛みを訴えてくる。
そんな真田の様子を知ってか知らずか、空になった瓶を取ると高嶺は後ろを向き、冷蔵庫を開けた。冷たい牛乳を少量注ぎ入れてから蓋を閉め、パシャパシャと振っている。
「はいどうぞ。今年はこれでお終いですよ」
やわらかい色の液体を口にして、真田は驚いた。
「こんなのは初めてだ。とても美味しい」
嬉しそうに飲み干した口元を指して、高嶺は笑いながら教えた。
「隊長、泡、ついてますよ」
その笑顔は不安を掃い、来年の約束を信じさせてくれる。
高嶺となら、本当にそうなるに違いない。
真田は両手をテーブルに突き、伸び上がって唇を軽く触れさせた。


「……甘いですね」
驚きを隠せない高嶺に、ちょっと得意そうな顔をしてみせる。
それでも急に照れ臭くなって、唇を拭ってからぷいとそっぽを向いた。



「嶺」
しばらくして真田が口を開く。
「はい」
「……待てないから、りんごで作ってくれるか?」
「はい」
真田に向けられる微笑は、いつも変わることはない。



それから二人で買い物に出掛け、その日の夕方は、部屋中に甘い匂いが満ちた。










2007/10/28
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えっと、時期が合わないんです(汗)
ジャムの話題は以前書いた『君の名は2』にも出てくるんですが
苺の時期とこの話とあの話の季節交渉がっ(大笑)
まあいわゆるひとつのエピソードとして
さらっと流して読んでいただけますように←逃げた=3




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