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君の名は
2009年04月05日 (日) | 編集 |
ありゃりゃん

アップの順番を間違えてしまいました(ダメぢゃん!)
このお話は『約束』と『陽だまりの中で』の間に書いたものです。

まぁ……順番違っても大差はナイか(笑)





******************************************************





『 君の名は 』






真田がインドネシアから戻って、数日。
まだ正式に辞令は交付されていないが、報告書などの書類仕事に彼は忙殺されていた。

「おう、真田」
声を掛けて入ってきた黒岩が私服なのを認めて、上がりですか?と声をかける。
「インドネシアの土産話でも聞かせてもらおうと思ってな、どうだ? 今夜」
「はい」
そう返事はしたものの、どことなく元気のない様子に黒岩は苦笑した。
「真田隊長はお疲れか?」
「……隊長、じゃないですよ」
ぼそりと呟くと、急に思いついたように、がばと身を乗り出した。
「そうだ、黒岩さん! 聞きたいことがあるんだ」
「お、何だ?」
「プライベートに立ち入ってしまうことになるが、構いませんか?」
その剣幕に笑って黒岩は答えた。
「おう、いいぜー。トッキュー姫のお望みならな」
「トッキュー ……姫?」
何のことだか分からずに、その真意を測るように真田はじいっと黒岩を見つめ、やがて少しだけ首を傾げた。
「おいおい、そのクセは止めとけ。野郎共が暑苦しく悶える」
またもや意味が分からず、真田はしばらく頭を悩ませていたが、やがて反対側に首を傾げた。
「……コノヤロー、先輩の忠告が聞けねぇってのか」
黒岩は真田の首根っこを捕まえるとわしわしと髪を掻き回した。
「うわっ、止めてくれ黒岩さん! 話、話を聞かせてくれるって」
気が済んだのか黒岩は真田を放し、どかりと座り込んだ。
「で? なんだって」
いざ正面きって尋ねられると口籠ってしまう。
「その……黒岩さんの奥さんは、あなたを何て呼んでるのか……」
「ああん?」
唐突な質問に面食らったが、しかし真田は至極真面目な面持ちで黒岩の言葉を待っている。
「だから……なんだな、まあ「お父さん」とか」
「お父さん?」
納得のいかない視線を黒岩に向ける。
「真田よォ、子供がいるとな、夫婦なんてのはそんなモンだぜ」
「じゃあ、結婚前は?」
「そりゃ、……名前か?」
「そうでしょう? 名前を呼びますよね」
的を得たり、と真田は言葉を続ける。意気込んだ様子に黒岩は吹き出した。
「つまりそういうことか。お前さんは愛しいヒトに名前を呼んでもらえないって訳だ」
「……………」
実に分かりやすい。
「おいおい、いいじゃないか。「さなださん」それで」
口をつぐんでしまったところを見ると、どうやらそれでは良くないらしい。

かわいい男だと思う。
神兵と呼ばれるほどの実力を持ちながら、常に己を叱咤しつづけ更に上を目指す男。
どこまでも妥協を許さず、志を忘れずに進み続ける男。
反面、日常ではやたらと不器用なところがあって、放っておけないらしく、三隊の奴らは何とも嬉しそうに、この男の世話を焼いていた。
黒岩はかわいい後輩に噛んで含めるように言って聞かせた。
「真田。気持ちは分かるがな……呼び方なんてのは二人が上手く行ってりゃ何でもいいんだぜ?あんまり多くを望むなよ、ん?」
「だからって、なにも最中に…たいちょ」
「わわわわーーーーっ!」
いつから居たのか嶋本の雄たけびが部屋中に響いた。
「たいちょ!何言うてんのですかっ! ちょっ、コッチに来て下さい!」
「何だ、シマ」
迷惑そうに眉を顰める真田の腕をむんずと掴んで立ち上がらせると、嶋本は90度の角度で黒岩に最敬礼した。
「黒岩さん、すんませんでした。お手間取らせましてっ!」
納得のいかない様子のまま、真田は引き摺られるように現三隊隊長に連れ去られていった。


一連の出来事に黒岩は眼をぱちくりさせていたが、やがて真田と同じように首を傾げる。
「おっと、俺がやってもカワイくねぇか。 あいつの相手? はーん……一年越しってか。そうかそうか、恋するお年頃かね、お姫様は」
面白そうに笑って、ぎしりと椅子を鳴らした。

「シマ、放せ」
基地脇に連れ出された真田は、掴まれた腕を振りほどいた。
「黒岩隊長にあんなん聞いてどうするつもりやったんです? まったくもー、昨日まで機嫌良うしとったのに……何です?喧嘩ですか?」
真田はバツが悪そうに視線を外す。
嶋本は備品倉庫に居るはずの元凶の男を呼んだ。
「嶺っ!高嶺―――っ!!」
ひょっこりと顔を覗かせて姿を認めると、高嶺はこちらにやって来た。
「何ですか?」
途端に真田は、ぷいとそっぽを向いてしまう。
かーーーっ、痴話喧嘩かよ? ったく何で俺は……
犬も喰わないというものに首を突っ込んでしまった不甲斐無さに己を責めるが、ここで引き返すわけにもいかない。
「お前、ちょっと屈め」
大人しい男は疑問に思いつつも、言う通りに身を低くする。

ばこーーーーん

「あがッ!な、何?シマ」
「何じゃないわっ! オマエ何した?」
「何って……」
頭を擦りながら高嶺は困った様子を隠せない。
「困ってる場合か、自分の胸に手ェ当てて考えてみぃ! 何様や、痴話喧嘩だぁ?十年早いわ!言うこと聞いて大人しくしとったらええんや」

「シマ……そんな言い方はない」
その剣幕に何も言えないでいる高嶺に、真田が助け舟を出した。
「俺が我が侭を、言ったからだ」
「違いますよ、俺が……」
ああ、ああ、来たわ~。コレや……二人の譲り合い精神って、堪忍……
嶋本は一気に自分の立場の悪さを察した。
「わーかーりーまーしーた! 後は二人で話しとったらええ…… 邪魔モンは消えますわ」
とは言ったものの従来の世話好きがその興味を押さえられず、つい聞いてしまった。
「で、原因は何やったんです?」
「ん……」
少し言い淀んで真田は高嶺を見上げる。
優しい眼ェして……わかりやすい人やなぁ、と今更ながら思う。
「や、俺が名前を……なかなか呼べなくて。スミマセン」
「嶺も照れることがあるって分かったから……もういい」
はい、はい、はい、はい。 
聞いた俺がアホやった……嶋本はやはり後悔した。


二人を後に残し、戻った嶋本は黒岩のしたり顔に迎えられた。
「……黒岩たいちょ……まだ居たんですか」
「苦労するよなぁ~、姫が相手じゃ」
「知りませんよ、俺には関係ないし」
大きく溜め息をついて、どさりと椅子にダイブする。
「お疲れだな」
「何ですか? 帰らんでエエのですか~、おうちに」
にやにや笑いながら黒岩は嶋本のところに回って来た。
「お前を誘ってやろうかと思ってな。慰労会だ」
「しゃべりませんよー、なんにも」
ちらりと黒岩を見上げて牽制する。
「分かってるって、あんなのは見てりゃ分かるしな」
「…………よね。あ~、アホらし」
「まぁ何だな……うっすらと隈作って、そーゆーことか。相方は睫毛の影が深すぎて分からんけどな」
何も言えない。
「色っぺぇったら」
「黒岩さん、まんまオヤジの発言ですわ、ソレ」
自分がどれだけ気を揉んでも徒労におわるのは明らかだ。隠す甲斐のないことを悟って、嶋本は半ば愚痴るように言った。
「お? だってよ、やっぱり真田はココの花だろ? 宮さんもあいつがインドネシアに行くときは、詰まんねぇ詰まんねぇってうるさかったぜ」
「一ノ宮さん?」
意外な名前を聞いて驚く。ウチの副隊長? あの痩せ型のイタチか?
黒岩は面白そうに続けた。
「知らねぇのか? アイツの似合わんグラサン、真田のプレゼントだってよ」
「ええええっ!」
椅子からずり落ちそうになって、かろうじて踏ん張る。
「な、な、な、何のハナシですっ?ソレ」
黒岩はがははと笑いながら、嶋本を引っ張り上げ、教えてくれた。
「真田がまだ副隊長だった頃にツマラン賭けをして、宮さんが勝ったんだと。でな、何か買ってくれって言ったら、そこにあった店に入って即買いしたってさ。センスねーったらとか言いながら、アレ持ってるといいことがあるとか言いやがって……敵は多いぜ~、琉球民族」
「……妻持ちはご遠慮頂いてマス」
切って捨ててみた。
「お堅いな」
ニヤニヤと笑いながら、黒岩は頬杖をつく。
「はぁ~……もうイイですわ」
大きな溜め息をついて嶋本はぐるぐると首を回した。
「保護者は辛ぇな。ただ、まぁ一つだけ言えるのは」
やけに真面目に黒岩は言った。
「お前ら全員、真田に甘すぎだ……」
苦虫を潰したような顔をすると嶋本も言った。
「まんま返しますわ、黒岩隊長」


すっかり月も登る頃、連れ立って基地を後にする。
建物から出てふと見ると、さっき離れたままの位置に、まだ二人が居た。


「やっとれんわ…………」


どちらともなく呟くと、一隊と三隊の隊長は並んで夜の街に歩いていった。










2006/11/04


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