超絶遅速更新駄文置場 ときどき 日記
スポンサーサイト
--年--月--日 (--) | 編集 |
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

春の愚者達
2009年04月05日 (日) | 編集 |
一ノ宮さんって……( ̄m ̄)




******************************************************






『 春の愚者達 』







「なぁ~、黒ちゃん」
とある昼下がり、一ノ宮は基地横の陽だまりで隣の黒岩に話しかけた。
咥えたタバコの先を揺らしながらのったりと話す、いつもの風景である。
「んー?」
ぷあ~っと煙を吐き出しぼんやりとそれを追いかける。
黒岩も次の言葉をのんびりと待っている。
「あんなぁ、嫁が出て行ったんだわ」
「ふーん……って、ナニっ!」
すごい勢いで向き直った黒岩を見て一ノ宮は笑う。
「はっはは~、驚いたろ? ま、ちょいと実家に帰ったんだけどな」
「おい~」
「ンな訳で一人なんだわ。つまらんで」
「知るかよ」
驚いただけ損をしたというように黒岩は冷たい。
「なぁ、今晩付き合わん?」
「やだね」
目当ての黒岩に振られた一ノ宮はしばらくもそもそと煙を吐いていたが、急に思いついたようにニカ、と笑った。
「また……何たくらんでるんだ? オマエさんはよ」
「んー? イイことー」
悪戯好きなこの男を阻止するのは不可能に近い。黒岩はやれやれと肩をすくめた。



「おーい、高嶺」
「はい」
一ノ宮に呼び止められて高嶺が近付いてくる。
「副隊長会議、やるぞ」
「は?」
「だから今晩空けとけー」
いきなりの言葉に面食らった高嶺は、眼を瞬かせて言葉に詰まった。
高嶺は一ノ宮が好きだ。
己の実力を自覚し、特救隊のために如何にそれを役立てるかを熟慮している。
自分も長くここに身を置くのならば、この人のようにありたいと考えていた。
それに何よりも大切なあの人を可愛がってくれている。
「あの……」
「真田はダメだぞ、今日は」
「いえ、そうじゃなくて。だから会議って……」
「まぁ、たまにはな、隊長をフォローしつつ、なおかつ隊員を引っ張らにゃならん立場同士でだな……おーい」
私服の大口を見つけて、一ノ宮は声をかける。
「お先に失礼しまーす!」
帰るところだったのか、大口は慌てて部屋を出て行った。
「逃げたな……てコトはよー」
一ノ宮はブツブツ言いながら指折り数えている。
「あいつは当直だろ? でもって……あいつはダメだって言ってたし」
高嶺はくすりと笑った。大口くらいの年齢のヤツにとってこの人はさぞや扱いにくい
人物なんだろうなぁと思う。だとしたら随分と慣れてしまった自分は年を取ったということなのかもしれない。
「結局、二人だわ」
「は?」
「二人っきりでお食事、ってラブラブだぁな」
「はあ……」
二人で会議っていうのもなぁ……そう思ったが、一ノ宮からは再度真田はナシだぞ、と念を押されてしまった。

高嶺は真田に事情を話し、嶋本に真田の夕食を頼んでから一ノ宮と連れ立って基地を後にした。

遅くはなったものの、何とか今日のうちに家に戻れた。
やはり真田の姿は無かったが、それでも嶋本と一緒ならと安心して、気にも留めずにいた。



翌日、出勤してみると真田の元気がない。
理由を聞いても口籠るだけで話そうとしない。
嶋本に尋ねると、昨夜も元気がなく帰りたがらなかったから泊めたと言い、さらにはオマエ何しよった、とどやされる始末だった。
正直、覚えがない。
昨日は一ノ宮と、いつもなら真田を交えるところだが、今回だけは二人で食事をした、それだけではないか?
「隊長?」
肘をつき、ぽやんと眺める視線の先を見れば四隊の長倉隊長がいた。
訳がわからず、高嶺も真田を見続ける。
長倉を見ているようで、そうでもなく、時折口元の指を強く噛んでいる。
はぁ……と真田が溜め息をついた時にもう一度声をかけた。
「隊長」
ちらと視線を上げたが、すぐに逸らして何も答えない。
何かを言いたいのに言葉が見つけられない、そんな様子にも思える。
「どうしたんです? 昨日……何かありましたか」
思い切って尋ねた時に真田の肩が強張った。
気長に待つと小さな声がポツリと呟いた。
「相談くらいしてくれても良かったのに……」
何のことかと思う。一ノ宮と食事に行ったことを怒っているようには見えないが……
「隊長?」
高嶺はしゃがんで、下から真田の瞳を捕らえる。
「何のことですか?」
静かに尋ねると真田は言葉を詰まらせ、その後むっとしたように答えた。
「四隊に行くのなら……先に俺に話して欲しかった」
「は?」
意味がわからずに聞き返す。
真田の表情が悲しげに曇る。
「いつからだ?」
「待って下さい。なんで俺が」
「なぜ隠す? 昨夜はその話だったんだろう」


あのイタチ~…… と以前嶋本が拳を握り締めていた場面が急によみがえってきた。
「隊長? 一ノ宮さんに何か言われたんですか」
高嶺の慌てた様子に不思議そうな顔で真田は答える。
「長倉さんが、どうしても一ノ宮さんだと萎縮してしまうからって……基地長に相談して、それでお前と一ノ宮さんがトレードになったって……」
アヌイタチ~…… 嶋本の気持ちを理解した瞬間だった。
無言の高嶺に真田が怪訝な表情になる。
「嶺?」
真田の声に我に返り、心して穏やかに答える。
「嘘ですよ、そんな話はありません」
「うそ?」
「そんな話は出ていません」
「だって昨日はその引継ぎじゃ……」
ふと視線を移すと長倉のところに件の問題男が戻ってきていた。
「一ノ宮さんっ!」
すっくと立ち上がり声を上げると、にやりと笑ってぺしっと自分の額を一叩きして、親指を立ててみせる。
高嶺は拳を握り締めた。
一ノ宮は悪びれもせずひょこひょこと近付いてくると真田の顔を覗き込んだ。
「一ノ宮さん……」
「昨日はよ、カワイイ子を騙してもいい日だからな~。ちっとな?」
「……一ノ宮さん……」
何も言えずに真田はむぅと唇を結ぶ。
一ノ宮はますます嬉しそうに笑うと真田の頭をがしがしとかき回してから、改めて撫で回す。
迷惑そうに頭を振り、その手をどけさせようとする真田の様子を眼にしてか、長倉が慌ててやってきた。
「ちょ……一ノ宮さん。止めて下さいよ」
「あー?」
「すいません! 真田隊長」
腕を押さえて一ノ宮を静止すると、平身低頭で真田に詫びながら長倉は訴えた。
「副隊長の時は隊長を諌めて、隊長になったら何で副隊長を諌めにゃならんのですか?頼んます! 他の隊にちょっかい出さんで下さいよ」
「長倉さん」
真田の声に長倉はビシッと直立する。
「高嶺が二人いたらお貸ししたいんだが…… 頑張って下さい」
大真面目な顔で真田は言う。
何のことだかわからずに必死に頭を捻る長倉に、ぽそっと一ノ宮が囁いた。
「な? いじめたくなンだろ?」
可哀想に、苦労するよねこの人も……自分が渦中の人物であることをすっかり忘れて高嶺は思った。




部屋の隅から一連の騒動を眺めつつ、黒岩は真剣に頭を悩ませる。
あの連中と一緒で、どうやったら長倉に隊長職を全うさせてやれるんだろうか?
「黒岩たいちょ……」
傍らにやってきた嶋本が声をかける。
「あー、ナンだな…… 嶋本」
「そうっす、ね……」
考えていたことも同じ、ついた溜め息も同時だった。




春は四月二日の出来事。
桜もそろそろお終いである。








2007/03/11


スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。