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うそつき
2009年04月05日 (日) | 編集 |
真田さんの心の中は……





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『 うそつき 』





高嶺のところに出入りするようになっても習慣というものはそうそう変わるものではない。
隊員は皆、各自そうであるように俺も自分メニューのトレーニングを欠かすことはなかった。
基地で訓練のなかった日は多く走り、筋トレをして、ストレッチで整える。
それでも一つだけ、新しく覚えたことがあった。

風呂に入って汗を流した後、もう一度ストレッチと称してラグの上に陣取る。
高嶺の家は、今時のマンションらしく床暖房が完備されていて、そこにぬくぬくと転がっているのはとても気持ちがいい。
「トレーニング後に休むのは良いことなんですから、堂々と寝てください」
笑いながら高嶺は言うが、だらけることには抵抗がある。
だから俺はストレッチをする、一応は……


髪を撫でる手を感じてふと、眼を開けた。
高嶺がしゃがんですぐ隣にいる。
電気が眩しかったので眉をしかめたら、何を思ったのかすい、と手を引っ込めた。
「……なんだ?」
「いいえ」
そう答えたくせに笑っている。
「なんだ?」
上体を少し起こしてもう一度聞いた。
「いいえ、ただ似ていると思って」
似ている? 何に?
短い会話。二人で居ると、あまりの静かさに何時間も声を出していないことに気付くことがある。今まで俺の周りにはいつも話を振ってくれる人間が必ずいて、今は嶋本とか、その前は……
「いえ……昔、家に居た猫が」
物思いから引き戻される。
「俺の布団がお気に入りで、真ん中に長々と寝るんですよ」
他愛もない話。
「どけようとすると怒って引っ掻くものですから」
「それで……?」
「いつも身体半分、畳の上で寝てました」
何だってこんな話をしてるんだろう。
それ以前に俺はここに居て良いんだろうか……高嶺は滅多に触れてはこない。
何となく続いているものの、やっかいな関係になったと思っているのかもしれない。
簡単にはいかないものだな、と思いながらもう一度頭をクッションに戻した。
「隊長、そこでお休みにならずにそろそろベッドに行かれては?」
「……お前は」
眼を閉じたまま言葉を続ける。
「お前はそうやって、いつも俺を先に行かせる。そして眠ってしまって朝だ」
同じことの繰り返し。
「眠れる時はその方がいいです。あなたは人より身体を酷使している、お疲れだと思います」
尤もらしいことを言われ、起き上がりざまに口に出していた。
「じゃあ俺は何でここに来てるんだ?」
こんなことを言うつもりはなかったのに……
視線がかち合っても、高嶺の静かな眼差しは変わらない。
やがて気が削げて、力が抜けた。
「……もういい……」


高嶺の膝が動いたかと思うと、次の瞬間捕らえられていた。
いきなりだったので体勢を崩し、腕の中に納まる。
抗おうとしたが、たとえ布地越しでも頬に当たる体温には逆らえなかった。
「我慢して非難されたんじゃ、割に合いません……」
溜め息まじりに困ったような声が聞こえる。
今、この男は我慢と言ったか?
「……してたのか?」
「もちろん。理性総動員ですよ」
即答されて驚いた。
「俺は……そんなに疲れているのか? はっきり分かるほど?」
人に心配されるほどの状態だったのかと気になって、尋ねてみる。
「一人で居ると、時々心がそこにはないみたいで……自覚はないんですか? あれだけ完璧に仕事をする人が、自分のこととなると何の頓着もない」
体温に包まれる快さに気持ちが柔らかくなっていく。自分の単純さを笑って、もう一度顔を強く押し付けた。
「隊長? 聞いてますか」
俺の頭を大きな手が優しく撫でる。
既に聞く気など全くない。ただその心地よさに眼を閉じた。
高嶺は……笑ったんだろうか、頭に鼻先があたったかと思うともう一度抱き直されて、ゆっくりと指先が髪を梳く。
静かなのも悪くないと、思う。
「……隊長」
呼ばれて見上げると、そのまま唇が降りてきた。
押し包まれるような口づけ、触れればその先を望み、応える。
忍び込む舌が絡みついて意志を持って動き始める。
大きくて厚みがあって、でも器用で…… 手と同じだと考えていたが、すぐにそんな余裕はなくなった。
「嶺……」
頭を引き寄せてその先をねだる。
「ここでいいんですか?」
からかうように唇を啄ばまれて囁かれた。
「……イヤだ」

高嶺は文字通り真面目な男だが、ことセックスに関しては大らかというか、大胆だと思う。
男は自分が初めてだと言っていたが、様々なことに何の躊躇いも見せない。
温かい身体から離れるのを渋ると、笑って腋下に手を差し入れて容易く運ばれた。
ベッドの脇に下ろされて、高嶺は先に自分が横になり腕を引いて俺をその上に導く。胸を合わせると、体格の差をつくづくと感じた。
「さっきの話の続きです」
「さっき?」
「猫ですよ」
「ああ……」
大きな手が直に脇腹を這い、スウェットの中に潜り込んでくる。
ざわざわした感覚に気を取られて、言葉など耳に入らない。それでも一向に気にするでもなく、高嶺は話を続けている。
「俺が布団に入ると、今度はこっちがいいらしくて腹の上に乗っかってくるんですよ。自分は子供だったし、大きいヤツだったんで重くて……」
ゆっくりとした刺激が物足りず、訴えるように腰を擦り付けた。
動き回る掌がスウェットを押し下げて尻を包む。
「最初はもっと硬いかと想像してました。それよりもずっと滑らかで柔らかい。やはりあなたの筋肉は質がいいんですね」
時折掴むようにして割り広げられ、指が……掠めていく。
「嶺……」
焦れて呼べば、身体を入れ替えて温かいシーツに押し付けられた。
服を脱ごうとした手を押さえて高嶺は言った。
「俺にさせて下さいね」
再び手を潜り込ませ下着ごとスウェットを足先に落としていく。抜き取りながら膝を掬われて大きく開かれ、中心を含まれた。
気持ち良さに思わずついた溜め息に、次の瞬間羞恥が噴きあがる。
それでも与えられる快感は計れない早さで理性を食い散らかし、抗って伸ばしたはずの手もいつの間に高嶺の頭を抱え込んで、その動きに合わせて俺は腰を揺すっていた。
到達を望んでいるのに、意地悪く外された唇はゆっくりと内腿を巡り始める。
齧られ吸われて…… じれったさに身体を捩る。
「嶺…… 高嶺…… 」
手に触れる頬を撫でると伸び上がり抱き締めてくれる。
肌を与えられないもどかしさに背中の布を引っ張ると、目蓋に口付けられて高嶺は服を脱いだ。
残っている俺の上衣を頭から抜き取って、今度はあらゆる部分を唇がたどっていく。
耳、爪先、のど、腋下から胸、胸から腹。
その間中弄われ、嬲られて乳首が痛いほどに存在を主張している。
「紅いですね。すごく硬い」
もう一度舌で覆われ、転がされて腰が小さく跳ねた。
背中から尻へと滑らせた掌でそのまま腿を掬い、やっと待ち望んだ場所に唇が届く。舌先があたった途端に身体が強張った。
「ダメですよ。力抜いて下さい」
入り口を指でやわらかく解されながら広げられ、舌が入り込んでくる。
もっと奥に…… もうそれしか考えられない。
舌で舐りながら指が差し込まれて、徐々に深く内壁を探られる。
「ふ…… あぁ」
堪えていた声を一度漏らしてしまうと、もう押さえは利かない。
辛いままに放り出された自身に触りたくて手を伸ばし、また阻まれる。
「嫌だ、触る」
「もう少し、我慢して」
その間も休むことなく俺の内部を長い指が擦り続ける。
「イヤだ……イキたい! 早く」
開放を望む本能の前に羞恥心は消えてなくなる。
なのに高嶺は憎らしいほどゆっくりと、それでも確実に俺のポイントを弾き続ける。
「嶺、嶺……バカ!」
「力、抜いてて下さいね」
指が抜けていく引き摺られるような感覚の後、熱いモノが触れた。意識して息を吐き出すと、それが呼吸を合わせるように押し付けられる。
「っ、あ……」
騙し騙しゆっくりと、慎重に俺を満たしていく。圧迫感に息がつまりそうだ。
やわらかく腹を撫でられて、そこから張り詰めた先端までをたどられる。
ぬるりとした刺激にもビクビクと反応したその根元を強く押さえ込んでから、高嶺は俺の腰を抱え直した。
内部をいっぱいに満たしている塊の脈動が身体の中に響く、それを感じ取った瞬間に血が沸き立った。
「み ……早く……」
「大丈夫そうですね」
高嶺の声が聞こえて、確かめるように軽く二三度突つかれたかと思うと、次の瞬間波が引く時の勢いで熱がずるりと抜けていく。
抉られる感覚に思わず力を溜めて止めようとすると、タイミングを外して今度は打ち込まれる。
「い、ああっ……んんっ!」
繰り返される抜き差しに、だんだんと頭の中に光の靄がかかり始める。
身体を支配する塊の存在だけが全てで、呼吸の仕方を忘れてしまったように息ができない。
その感覚が怖くて、高嶺の背に足を絡め動きを留めようと締め付けても、揺さぶられて別の快美に混乱した。
「ヤ、だ! 駄目だ、待……」
「こちらも駄目です。もう待てない」
自分の全てを明け渡し、堪えることも放棄して俺は達していた。



眼を開けると部屋の空気は静まり返っていた。
時間を確認しようと時計を探り、身体が軋む。
あれから……?
引こうとする高嶺を留めて……そこから先のはっきりした記憶がない。
何度も絡み合った気もする。このだるさは多分そうだろう。
なのに反対に気分は随分とすっきりしている。己の単純さに笑っていた。
布団の中は暖かく気持ち良くて、時間を気にするのも馬鹿らしくなって俺はもう一度ごそごそと潜り込む。
隣には高嶺が居る。いつもは先にベッドを離れてしまうのでこんな些細なことが妙に嬉しかった。
「嶺……」
「はい」
即座に返ってきた声に驚いて見ると、高嶺はちょっと眼をしょぼつかせていたが、手を伸ばしてきて俺の額やこめかみに滑らせる。そうされながら俺は普段から何気なく感じていた疑問を口にした。
「お前……いつ寝てるんだ?」
「え? 寝てましたよ、今」
ここでまた会話が途切れる。
それでも大きな手に構われて、今はこの沈黙が嫌ではなかった。
高嶺は手を止めて、布団が俺の肩を包むように引き上げる。
「眠れませんか?」
「いや……」
「まだ朝まで時間がありますよ」
「ああ」
高嶺は天才だと思う。
この家で随分と俺は「心地よいこと」を覚えた。
一度知ってしまうとそれ以前には戻れない。自分にもレスキュー以外の部分で人並みの欲があることを知った。
穏やかな海に潜っている時のように、ここでは何も考えずにただ漂っていられる。

それなのに、この関係はいつまで続くのかとも考えている。
この男が好きなのか、それともこの心休まる環境から離れたくないだけなのか、自分でもよく分からない。
答えはいつか出るんだろうか?

どのくらいの時間が経ったのか、ずっと時計の音が耳に付いて眠れない。
堂々巡りの思考にも疲れて、答えを求めるように小さく名前を口にした。
「嶺……」
「はい」
今度こそ驚いて飛び上がった。
過剰な反応に高嶺も驚いたらしく、笑いながら俺を覗き込む。
「どうしたんです?」
「何でもない!」
「呼ばれたから返事をしたのに」
まだ笑っている。
「寝てると言ってたくせに……嘘つき」
「寝てましたよ、本当です」
物思いを知られた決まり悪さを隠すように、俺はムキになった。
「うそつき」
そして ……口に出した言葉に頭の中が白くなった。
平静を装って背を向け、身を硬くする。
「隊長?」
高嶺の声も耳に入らない。


気付いてしまった。 
今までも、これからも、絶対に告げることのない言葉。あいつに投げつけたかった言葉はこれなのか。
恨みなどない。 怒りよりは悲しかった。 
それでもあの時心の中で、俺は何かを叫んでいた。

――うそつき――


「隊長……」
静かに肩を撫でる手がある。
俺は……
それなのに俺は未だに心を残したままでいる。
「嘘つきは、俺かもしれない」
ぽそりと言葉を落とす。
それでも掌は外されることはない。
「……嘘をつくのは、人間だけです。 それは罪なこともあるし、救いになることも……的外れな答えかもしれませんが」
それ以上の言葉はなく、そっと腕が回ってきて温かさに包まれた。
「今日は休みましょう。 また、明日……」
もう考えなくても良いと、その温もりは伝えてくる。
「嶺……」
もう一度呼んでみた。
声は返らずに子供を寝かしつけるようにトン、トン、とやわらかく叩かれる。

人は嘘をつく
たとえ本意ではなくとも
……そうなのかもしれない。
それでも回されたこの腕は、言葉よりよほど確かなものだと思えた。
自分だけに与えられた温もりの中で、心の波は凪いでいく。
穏やかな鼓動を背に感じながら、俺は静かに目蓋を閉じた。







2007/01/28


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