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《浪音》 壱
2011年01月01日 (土) | 編集 |
以前騒いでいた元親×才蔵の話を書いてみました。
需要があるかは知ったこっちゃなく(ヲイ)書いたからにはオモテに出してみようかと……( ̄m ̄)

もし読んで頂けるようでしたら、以下の事にご注意下さい。

●このお話は元親×幸村前提の【元親×才蔵】です。

●元親の船、これは富嶽ではなく帆船です。最初は琉球の進貢船をイメージして書いてたんですが……途中で普通の帆船になりました(笑)

●才蔵は元々は幸村の父、昌幸に仕えていましたが、昌幸の意向でその後幸村付きになりました。

●江戸時代には紀州から江戸まで蜜柑船が一月かかったこともあると聞きますが……BASARAだからね(笑)土佐から駿河まで5日くらいでいっかと( ̄m ̄)

あ! 大人表現あります! ヌルイですが……
対象外の方、ご遠慮下さいませm(_ _;)m


少々長いので3分割です。






武田信玄の命を受け、霧隠才蔵は西の国へと旅立った。
表向きは盟約相手への御機嫌伺いだが、実際はその動静を探り把握しておくための偵察も兼ねている。
通常なれば忍隊隊長、佐助が遣わされる所だが、信玄もその辺りは把握しているのだろう。
「幸村はあやつが居らねば夜も日も明けぬじゃろうから」
付け足すように言ってのけた。
「承知致しました」
持たされたのは親書の他にもうひとつ。
「若の似絵とは……これはお館様の奇知と言うべきなのか……?」

『良いか? くれぐれも鹿爪らしい様子を崩すでないぞ。それには佐助よりもお前が適任じゃろうと思うて選んだのだ。武田には真田幸村ありと、幸村は敵に回したくはないものじゃと、相手がその辺りを思うてくれれば、それで良い』

主・真田幸村は若者らしい快活さと、素直な心持ちと、ついでに挙げるなら容姿も大変に良く、諸国の武将にまで大層な人気だ。
「まあ……ある意味 賄賂だな」
しかし常日頃、実際に幸村と相対している自分にとっては絵などたいしてありがたいものでもない。はたしてこれが上策と成るのか、判断しかねて才蔵は腹の中で苦笑した。



まずは三河の国へと入る。
家康は元々武田には好意的で、幸村の絵を喜んで掲げ上げた。
「これは……何と! 素晴らしい似絵ですな!幸村殿の槍の勢いまでもが伝わるってくるというもの……あまりの出来映えに忠勝に見せても良いか、大いに悩み申す」
……あきらかに喜ばれているようだ……
想像以上の効果に才蔵は、心の中で信玄の策に疑いを持ったことを詫びた。


そして遠路、薩摩へと渡る。
島津義弘の幸村贔屓は有名だ。以前幸村が薩摩に滞在した折には、まるで孫でも可愛がるようにあれこれと世話を焼いてくれたと聞いている。
案の定義弘公は手放しで喜び、嬉しそうに目を細めて幸村の姿を何度も眺めていた。
噂にたがわず人情にも篤く、ただの遣いである自分にまでしばらく逗留し旅の疲れを休めていけと勧めてくれたが、先を急がねばならぬ身ゆえと、才蔵は丁寧に辞退した。


次に土佐へと渡る。目指す長曽我部の船に目星を付け、忍び入る。
港に着いた所で案内を乞い、こうして元親のいる屋敷へと連れてこられた。
「……忍だぁ? 幸のか?」
元親の声が聞こえてくる。
がらりと扉が開き、顔を覗かせたかと思うと元親は破顔した。
「誰かと思えば……才蔵じゃねえか」
「長曽我部様、お久しゅうございます」


***************************************


そうして、この好機を逃すまいとする心積もりか、朝から元親は出港の用意を続けさせている。
才蔵の辞退にも全く耳を貸さない。
「だからー、何でお前だけ先に帰らなきゃなんねンだよ。送るって!送られろって! 同じとこに帰るんだから! な?……これで決まりだ!」
元親の押しについには才蔵も折れ、同意せざるを得なかった。
「よしよし……ンじゃ、船の中ではコレな」
「は?」
「忍装束の方が目立つってもんだ」
「……ですがこのような」
船室で元親に渡された着物は日常に着るような木綿ではなく、染めも見事な上物と簡単に見てとれた。
「俺が着せてみてェんだから、いいだろ?」
その一言で全てを片付けると元親は出て行ってしまう。

外からは様々な声が行き交い出港前の慌ただしさが伺い知れる。
渡された着物に着替え終わる頃に一度大きく船が揺れ、どうやら離岸した様子だった。
さすがに船での勝手はわからずにそのまま元親を待っていると、ぎぃ と小さく軋む音と共に扉が開いた。
「着替えたか? じゃあ上に来いよ。野郎どもに顔見せしといてくれ」
才蔵が近寄り、外からの明るさに顔が見えたのだろう、元親が息を飲むのがわかった。
「…こりゃまた……」
大抵の男は才蔵の顔を見ると同じ反応を示す。
忍として里に入った時からの、既にもう慣れきった反応だった。
「幸から才蔵の美しさは格別で、それはそれは綺麗だって 呆れるほど聞かされてたもんだからよっぽどだとは思ってはいたが……さて、どうすっか」
「…どうする とは?」
「女っ気のない野郎どもに、こりゃあ刺激が強えかもな」
冗談のようにさらりと言って笑うと、元親は才蔵を伴って甲板に出た。



「野郎共、ちっと聞けや!」
元親の声に甲板の動きが止まる。この船上で、それは神の声に等しい。
全員が注視したのを確認して、元親が才蔵を脇へと引き寄せると、溜め息ともつかぬどよめきが空気を支配する。
「はっはー、おめえら! とびっきりの別嬪だぜ!」
うぉーと一斉に雄叫びが上がったが、それは元親の一喝で終息する。
「が!」
腕を振り上げている者もその一声で凍りつく。
「こいつは幸の忍だ。 わかってるな!?」
男達の表情が引き締まった。
「真田幸村の大事な忍に手ェ出したら、次の瞬間首が飛ぶと思えよ!」

「合点でさぁアニキ!!」「任しといて下せェ!」口々に承知を伝える声に混じり、漣波のように広がる感嘆の言葉を元親の耳は捉えていた。
「幸村様もそりゃあ可愛らしい方だが…」
「こっちもたまげた別嬪だぜ!」
「武田の武将はどんだけ別嬪揃いなんかのぉ」
「や!こんお人は忍じゃ」
「アニキが甲斐に行きたくなる気持ち、解るのぉー」
「賭けるか!?アニキとこの美人と……」

その光景を無言で眺めている才蔵の顔を盗み見る。
燦々と降り注ぐ陽の光の下で見ても、瑕ひとつない玉の如き美しさには何の遜色もなく、かえって眩しいほどだ。
それにしても……
「ったく… てェしたもんだよ……」
表情を変えぬふてぶてしいと思えるほどの面構えは、あの毛利の殿様にも劣ってねぇなと元親は苦笑した。




「長曽我部様、私は忍でございます。一国の城主様とご一緒できる身分ではございません……」
元親のはからいで、才蔵は一番上等な部屋をあてがわれた。
すなわちそこは元親の部屋だ。
「でもよー、お前さんを野郎どもと雑魚寝させるわけにゃあいかねんだよ。カラクリ装置に場所取られてっから 寝起きするのはここと、大部屋しかねえ。あんたは幸の大事な忍だ。俺が無理に乗っけたからには 無事に届ける義理がある」
そう言われてしまえば返す言葉もない。
乱暴を働かれても負けぬ腕はあるが、主が慕う人の部下をどうする訳にもいかない。
「……それでは隅に控えております故、ご無礼お許し下さい」
「忍にも色々あんだな~ …幸のお守りの、あの忍はすげえ態度デカイぞ」
「あれは表にて働く者。私はあくまでも影に潜む身ゆえ……」
「そんなもんか?」
さほど興味はないらしく、さらりと流すと元親は部屋を出て行ってしまった。

自分は……ずっとここに控えている方が良いらしい。
せっかくの好意だ、顔を見られるのはできるだけ少ない人数に抑えたい。
才蔵は眼を閉じる。

浪の音
船の軋み
足音
話し声

そして大きくゆったりとした揺れに身を任せ、感覚を澄ませていった。





夜の気配が訪れる。
耳が捉えた足音を追っていると、やがて小さな軋みと共に扉が開いた。
「灯だ、悪ィな 遅くなった」
その手には膳があり、灯と良い匂いを漂わせる椀、酒などが乗せられている。
「マジで気配がねえな …動かずにいたらまるで人形だ」
元親は暗がりに眼をこらして奥を探った。
灯を移し座り込む元親に寄ると座るように促される。
「まずは一杯といきてえところだが、冷めねえうちに腹に入れな。日が落ちて ちっと冷えてきた」
「御心遣いありがたく頂戴致します」

すぐ近くで箸を動かしていてもなんとも静かなもので、おそらくは自分が仕向けなければ ずっとこのままだと察した元親は口を開いた。
「なあ……」
「はい」
「忍の話を聞かせちゃくれねえか?」
「忍の、何をお聞きになりたいのですか?」
持っていた盃の酒を干して元親は脚を組み直した。
「ああ… 俺の国は海の孤島みてえなモンだろ? 気をつけちゃあいるが、往々にして情報が後手後手に回る。忍ってやつを使えば、その辺りがちったァ改善するかと思ってよ……どうだ?」
「はい。左様なれば、忍はお役にたつかと」
「そうか。で、実際どうすりゃいいんだ?」
「まず里に繋ぎを取り、しかる後にそちらへ赴かれるのが宜しいかと」
「ふーん」
「使われる忍は御自身の眼で確かめられることをお勧め致します。ですが……」
「ん?」
「私の考えを申し上げても宜しゅうございますか?」
「おう、頼む」
「長曽我部様は、忍と言えば真田か武田の忍衆を思い描かれるのではないかと」
「……違うのか?」
「傭われているという形こそ同じにございますが、我等は皆、家に 主に忠誠を捧げております。それは丁度……長曽我部様のご臣下方があなた様を慕い、集っておられますのと相違ございません。ですが通常、傭い忍は違うということをお心にお留め置き下さいます様に……」
身体ごと才蔵へ向き直り、元親は身を乗り出すように聞いている。
「契約はそれぞれに異なりますが、それを終えると同時に主との、たとえ親密に築いてき間柄であっても、それは無に解します。次の仕事で前の主を殺めることも不思議ではないのです」
「……そんなモンなのか」
「おそらく長曽我部様の御気質には合わぬ部分も多いかと…… 一言加えさせて頂きます」

眉間にしわを寄せながら唸り、元親は酒を注いだ。
「確かにな……じゃあ里を通さねえで直接、って訳にはいかねえのか?」
「例えば…風魔小太郎のような?」
才蔵には元親の言わんとする事が良くわかった。つまり個人と個人との契約ならば刹那な関係ではなく信頼も築けるか?ということだろう。
いかにも元親らしい考え方だと思う。
「まあ風魔ほど名が知れてなくても構やしねえが……ああいった一匹狼でそこそこの腕前の奴」
「そこそこの腕前の忍を探し出すのもよほど強運がないと……風魔ほどの忍に至っては言うに及びません」
「風魔ってのはそんなにすげェのか? 報酬も高えんだろうな」
「かなり、と聞き及びます。働きに見合うのであれば報奨は当然なれど……中には変化もできぬ野盗崩れが自らを忍と売り込むこともあると。里を通す利点はそこにございます。傭う忍の力量がある程度揃っ…」
嬉々とした気配を感じ、見れば元親の眼が興味に輝いている。
しまったと思った時には遅かった。
「変化……才蔵もできるのか?」
「それは…… 無論にございます…」
元親の口元がにかっと崩れたかと思うと、次の瞬間ぐっと腕を捕まれ引き寄せられていた。
「何をなさいます」
「変化、見せてくれ」
「素直に従うとでも?」
「このまま担いでって海へドボンでもか?」
「…あなたというお方は」
「頼むっ!」
強引に事を運ぼうとしておきながら拝む仕草がなんとも憎めない。
「お離し下さい」
「なあ~ ……駄目か?」
「……私とて、変化そのものをこうも近くに見ていられるのは…」
その言葉に弾かれたように元親は手を離す。
才蔵は つと立ち上がると灯の作る輪より離れ、そして戻った。


「元親どの」

「幸……」
自分が渡した青い着物。
着ているのは才蔵のはずなのに、そこにいるのはどう見ても幸村だった。
青も似合うんだなと見当違いな思いが一瞬よぎる。
「元親どの、杯が空ですぞ。某が酌をさせて頂きまする」
にこにこと笑みを向けてくる幸村を思わず掻き抱いていた。
「元親どの」
腕が覚えている熱い身体。
「元親どの」
もがく身体を逃すまいと腕の力を強めれば息が近くなる。
柔く紅いそれを味わおうとしたその時、元親の唇に指が触れた。

「長曽我部様、忍の唇など吸うてはなりませぬ」
はっと顔を見れば腕に抱いているのは……
「こりゃ…… 見事なもんだな」
「恐れ入りましてございます」
変化を解いてもなお元親は腕の力を緩めない。
「……長曽我部様」
「教えてくれ、何故忍の唇を吸っちゃならねえんだ?」
「無論、一番何かを含ませ易い所ゆえにございます。あなた様のお命は国の命、どうぞお心に御留め下さい」
諭されていると言うのに 元親は作り物のような唇を指でなぞり、動く様を確かめている。
「……ここにも何か含んでるのか?」
揺れる灯の中で隻眼がきらめく。

「…………なれば、お試しになられますか?」

大きな手がそのまま頬を覆い、重ねられる唇に 僅かな悔いが浮かび上がる。
焚き付けた火は簡単に治まるはずもない。
強く回される腕に身を任せ、才蔵は心の中で一度だけ年若い主に詫びた。


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