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陽だまりの中で
2009年04月05日 (日) | 編集 |
ミネサナだったはずなのに……( ̄▽ ̄;)






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『陽だまりの中で』






陽射しが優しい冬の午後。
今日は朝から穏やかで、昼休みにあたるひととき、陽だまりを求めて真田は基地を出た。
建物の脇に回りぼんやりと空を眺める。
東京の空は低い、気がする。
事有る毎にあんなに帰りたいと思っていたのに、今ではインドネシアの青い空を懐かしく思い出す。


「お? 先客か」
ひょっこりと顔を覗かせたのは三隊副隊長・一ノ宮だ。
「一ノ宮さん」
真田は身体をずらして、一ノ宮が壁に寄り掛かれるように場所を空けた。
「いいか?」
「どうぞ」
一言断ってから、咥えていた煙草に火をつけ深々と一服する。
「……決まったか?」
「いえ、まだ」
「まぁ…なんだな。お前さんなら本部か本庁だろ、ん?」
一ノ宮は耳の後ろを掻きながらぼそりと言った。
「打診は、あったんですが……」
「ゴネてやがるな、贅沢だぞ」

今まで辞令に対して不満を唱えたことはない。それが我儘なのはわかっている。
しかし今度ばかりは、と思う。真田はまだ救難の現場から離れたくなかった。
一ノ宮は尚も顔を見ていたが、やがて興味をなくしたかのように口元で煙草を遊ばせた。

「なあ……真田よ」
「はい」
「お前さん、やっぱ変わったんじゃねーか? インドネシアから戻って」
「はい。すっかり日に焼けました」
一ノ宮の動きが止まった。

羽田空港行きのモノレールが基地の前を音をたてて滑って行く。


「……他人と会話になってねえと思うことってないか?」
予期せぬ質問に、首を傾げる。
「これは……会話ではないんですか?」
一ノ宮は咥えた煙草を揺らしながら、眼で雲を追いかけている。

そんな様子を不思議そうに見ていたが、真田はやがて別の質問を口にした。
「三隊はどうですか? 嶋本は……」
確実に通じるであろう話題に、内心ほっとしながら一ノ宮は答えた。
「あいつは心配ないだろ? なんにも」
「そうですか」
真田の表情も和らぐ。
「俺なんか入れずに嶋本、高嶺でも行けたと思うぞ?」
「それは、違いますよ」
「ん?」
いつもなら熟考して物を言う男が、珍しく間髪をいれずに意見した。
「嶺が副隊長だったら、シマは相談することに何の躊躇も感じないでしょう? あなただから、あの負けん気で、自力で突っ走る。シマにはそれがいいんじゃないかと思います」
「そっか?」
「実際救難に携わっている時は、自分の経験とカンとだけに頼った咄嗟の判断を迫られる訳ですから。相談しているヒマはない。終わってから先輩方の意見を聞き、別のアプローチの仕方とか、他の対処の可能性とか……そうやって自分の中の選択肢を増やしていくんだと思います。 俺はそうでした」
ニヤニヤと笑う一ノ宮を真田は不思議そうに見る。
「……可笑しいですか?」
「ん~? 親心かねぇ、嶋本隊長はシアワセだ」
「俺にとってのシマは、丁度あなたのポジションだったんですよ。ぶつかって、噛み付かれて、助けてもらって、やってきたヤツですから……」
「だろうなァ…… あン時は、トッキュー初の若い隊長の下に誰を当てるか、かなり上も考えたらしいぜ? 嶋本はああやって気がまわる。高嶺は部下に持っててお前さんが扱い易いヤツを、っての人選だろ?」
「……初耳です」
「高嶺もなー、デカイ図体しやがって邪魔にならねぇっつーか…… たとえば黒ちゃんとこにやっても押さんとこにやっても、あのまんまですんなり馴染んじまうだろ、多分」
「そうですね」
「それだけに捉え所がねえと言うか……」
経験豊富な塾長も高嶺をどう評していいものやら考えてしまうらしい。
「一ノ宮さん、神林はどうですか?」
「兵悟ちゃん? いーんじゃねーのー、器の大きさだけなら天下一品だろ? ただし中身はいまだにスカスカですけど~」
的を得た言い方に、笑ってしまった。
一ノ宮も笑いながら言う。
「結構面白いぜ、三隊。……ま、はじめっから期待はしてなかったけどな」
「……そうですか」


「ホレ、それだソレ」
いきなり何を指摘されたのかと面食らう。
「……何、ですか?」
「わかりやすくなったんだよ」
何を言われているか理解できずに真田は怪訝な顔をした。
「インドネシアから戻って、わかりやすくなったって話だよ。前はこれっぽっちも表情なんて読めなかったのに、わかるんだな~、今は」
「え?」
「お前さん「寂しい」って顔したろ? 自分のいない三隊の話聞いてて」
「そんな顔……してませんよ」
正直な男をどうやってからかってやろうか、一ノ宮は眼を細めて考える。

そこに邪魔者が現れた。
「お~、ここにいたのか。おう、宮さんも?」
第一隊隊長・黒岩が顔を覗かせる。
「ジャマすんなよー、黒ちゃん。 イイとこなのになー」
一ノ宮は真田をがっしと引き寄せて抗議する。
「真面目な話だ。基地長が呼んでるぞ、真田」
一瞬の緊張で身体が強張る。
「はい。ありがとうございます」
そう言って自分を抱えている腕から逃れようとしても、一ノ宮は力を弛めてくれない。
「一ノ宮さん」
「……真田。この際ゴネるだけゴネてみろや、ここに居たけりゃな」
驚いて顔を見ると、コンと額を叩かれた。
「……ありがとうございます」
真田が一礼して歩き出すと、背中に声が掛かった。
「甚~、一緒にお仕事しようぜ」
立ち止まって振り返る。
「踏ん張って来いや、じ~ん」
はにかんだような、少し恨めしそうな顔を見せて、真田は建物に入っていった。




「おい…… 甚、甚って呼ぶなよ、名前で」
見送って、黒岩が肘で突いた。
「何でよ?」
突かれたところを一ノ宮は払う。
「ワケありでナーバスになってんだよ…… トッキュー隊のあの辺はお年頃なの!」
「ぁあ? 」
その先は続かず、ぼりぼりと頭を掻きながら黒岩は視線を泳がせる。
「なんだぁ? 全然わかんねー」
「何でもイイんだよ。お前ンとこの隊長が大事にしてる箱入りちゃんなんだからよ」
「ウチ? 嶋本?」
黒岩も壁に寄り掛かって溜め息をついた。
「可哀想になぁ、シマも。姫が相手じゃ苦労の大津波だわ……」
「あー? 何の話だ?」
ぺちり。
黒岩が一ノ宮の頭をはたいた。
「イテ……」
頭を押さえつつも、面白いことの大好きな男の眼は輝いている。
「ちょっと面白そうじゃねーか?真田争奪戦か? 俺も参加すっかな」
「嫁アリは不可だと」
「ンだぁ?」
不満そうに顔を顰める一ノ宮に黒岩は追い討ちをかける。
「でもって毛が薄いのもダメ。ハゲはもっとダメだってよ」
「お……」
さすがの一ノ宮も絶句した。
「あきらめろや」
「そう言われたって…… ナンだよ、結局ちっともわかんねー」

やわらかい陽射しの中をモノレールが行く。 暖かな昼下がりのひとコマ。







2006/12/14


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