超絶遅速更新駄文置場 ときどき 日記
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2010年05月30日 (日) | 編集 |
やっとやっとの続きです。
相変わらずでオリジナル人物も出張って参ります。
イラッときたらお引き返し下さいm(_ _;)m





さて、お話の中では もうすぐ冬がやってきます……


『思慕』






「ちょ!待った!! エンさんエンさん!えんどーさんっ!!」
「なんだー」
練習後に、今日こそはと勢い込んで遠藤をつかまえてはみたものの、どう切り出したら良いのかわからずに清田は言葉を詰まらせた。
いっそこの気持ちを読み取ってくれとばかりにぐっと遠藤を見上げてみる。
「オマエに見つめられても嬉しくねーっての」
「うー」
「何なんだよ」
「…だからー」
清田の言いたいことが、遠藤には何となくわかっている。
監督から神が海南大の推薦を辞退したのを聞いたのは、インターハイが終わってすぐのことだった。
その後に何があったか………… 
様子を見ていれば容易に想像がついたけれど、それが真実であるとは今でもどうにも納得がいかない。
それだけに神に懐いているコイツが何かを感じないはずがない。
「ちょっとコッチ来い」
腕を引っ張って体育館を出る。脇にまわってから水を向けてみた。
「神のことだ?」
コクコクと激しく首を縦に動かす清田に先を促す。
「聞くぜ、言ってみ」
「えーと……何があったか…良くわかんないッスけど……」
「うん」 
「最近の神さん怖くないッスか? や、怖いってのは正確じゃねーかな…… ん~、なんつーか……硬い?」
「硬い?」
「前の神さんはなんか温かくて柔らかくてほわっ……みたいな? うーん……別に怒ってるとか、息が詰まるとか、そーゆーんじゃないんスけど、けどなんか」
「まぁ… だな」
「っスよね!」
遠藤の同意に勢いづいて清田は求める。何でもいいから自分が感じている神の変化に説明が欲しかった。
「あンさ」
「はい」
「オマエ聞いてる? 大学のこと」
「それもッス!! ……ホントに?」
「俺も詳しく聞いたわけじゃねーけど、それはホント」
途端にがっくりと肩を落とす、清田の神への傾倒っぷりは今さらだ。
「神は選んだんだよ。こっから先、バスケだけやってくわけにゃあいかねってさ……だからって、まぁ…別々の大学行ったって縁が切れるんじゃねーから。な?その辺はわかってやれよ」
「なんでなんスか? ちょっと前までは他に選択肢がナイってくらい海南大に…」
「俺にも理由はわかんねーって」

「あ、いた」
ひょいと顔をのぞかせた話題の人物に、文字通り清田が飛び上がる。
「何してんだよ? こんな所で」
「や!その~……」
しどろもどろの清田をヨソに遠藤はしれっと言ってのけた。
「コクられてたのー! ったくジャマすんなよ~、もうチョイだったのに」
「えんどーさんっ!?」
「はいはい……ノブは着替えて、汗冷やさないうちに。遠藤はこっち、ミーティングやるから」
冗談には全く意を介さずに、清田の背中を押して体育館に戻ろうとして神は脚を止めた。
「ノブ」
合わせて立ち止まった清田の顔をすまなそうに見遣ると、静かな声が告げた。
「ノブには謝らなきゃ…… なかなか時間取れなくて、ちゃんと話せなかった。聞いてると思うけど、海南大に行くの止めたんだ……約束守れなくて、ゴメンね」
「神さん、あのっ!……バスケは?」
「バスケは……どうだろう。進学してからのことは考えてない ……今はとにかく、ここで一区切りつけるつもりで、やってる」
「神さん」
「今年は海南にとってチャンスだと思う。世代交代した翔陽、沢北が抜けた山王、人並み外れた求心力を持つ大黒柱が抜けた湘北も陵南にも……今なら負けない」
茶化すようにヒュッと遠藤が口笛を鳴らす。
「仙道や流川や、ずば抜けて力のあるヤツはいるけどね…… うん、負ける気がしない」
さらりと言ってのけた神の顔を清田は改めて見た。
「ノブには最重量級のプレッシャーかけて卒業してやるから。だから覚悟しなね」
「神さん……」
噛んで含めるような口調に、それは来年自分が海南バスケ部を率いて立つということなのかと清田の表情が硬くなる。
その頭をぽすんと叩いてのぞき込む神の表情は優しく、静かな自信に満ちていた。
「強気過ぎー。でもソコもステキー」 
「遠藤は~、茶化してるヒマあったら」
「はいはいはいはい、練習します精進します頑張りますー」
「まったく…… ノブ、行くよ」
仕方ないというように溜め息をつくと、神は清田を促して歩きだした。
「まーね…… お前はソレでいいのかよ ってハナシだけど?」
はぁ と大きく息を吐き出して、遠藤も後を追いかけた。







「ああ… 今日はもうダメだ」
ため息と共にゴツンと机につっ伏す。何回か額を左右に転がしてみたが、こうしていても埒があかないと、神は立ち上がりカーテンを捲り窓を開けた。
冴え冴えと輝く月を見上げると、ひやりと頬に触れる空気に冬の到来が近いことを教えられる。
月明りに照らされた路面を習いのように眼が追い始める。
牧の姿を追った路……

この家に牧が来ることは珍しかったが、自分がまだ小学生だった頃は遅くなると必ず送ってきてくれた。
自分は帰って行く牧を見送りたくて、玄関で手を振った後にここへ駆け上がり姿を追った。ちょうどあそこの角を曲がると樹々の隙間から牧の頭が見えて……次からはそこで手を振ってくれるようになった。
牧さん……

……やめよう、また考えてる……

それでもどうしようもないことがある。
男子の常として、溜まってきた熱は出すしかない。単純にその行為を済ませようとしても必ず記憶はついて回る。
その度に自分は牧しか知らないのだと、思い知らされた。
わかっている。一人ではあの高みには登れない。
思い起こしてみれば子供だった二人が好奇心から始めた行為で、それは欲求のままエスカレートして引き返せない所にまでたどり着いた。
快感を求める人間の本能ってすごいよなと他人事のように思い、次にはそれを打ち消した。

違う。

あの頃まだ身体も幼かった自分に反して、充分に大人だった牧はずいぶんと我慢していたに違いない。
あれは、成り行きとか衝動だけじゃなかった。
牧がどれだけ大切にしてくれていたか……ちゃんと知っている。
あの腕の中の安寧を、自分は捨ててしまったのだ。

牧さん……

どうしているだろうか?
何もなかったように日常に戻っているだろうか
少しでも思い出してくれることがあるだろうか
いや、あんな別れ方をした俺を、牧さんは……


考えるのは止めたはずだ。
考えていては駄目なのだ。
ウィンターカップがある。部活の引き継ぎも控えている。そして選んだからには受験も何としても勝ちを取りたい。
今だけは……

前へ進め

胸の中に巣喰う痛みを忘れるように、それだけを自分に言い聞かせる。
ジェットコースターのように過ぎて行く一日。
気持ちの整理はつくはずもなく、それでもバスケットと受験勉強に追われる日々。
今は時間に追われ続けることが、神にとっての救いだった。



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