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まわり道
2009年04月05日 (日) | 編集 |
ずっと書いてみたかった清→神です。
ノブはまっすぐに神さんが好きv





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『 まわり道 』





「な、あれ、ノブじゃね?」
遠藤が指さしたグラウンドの奥、走り方でそれが清田信長だということは容易に知れた。
「最近めちゃくちゃ走り込んでるぜ。ンー…でも調子はイマイチってか?」
「うん……」
相槌を打ちながら、この前信長と二人で帰ったのはいつだったろうかと神は考えた。三年になってからというもの練習後に打ち合わせがあったり、その後の自主練に遠藤も付き合ってくれるようになったりで結構遅くまで残っていることが多く、清田とはほとんど一緒に帰っていない。
「遠藤……」
その先を聞かずに遠藤は歩幅を広げて、ひらひらと手を振った。
「ほンじゃ、明日な~」


グラウンドに目を戻す。小さな影が夢中になってダッシュ走を繰り返している。
「ノブ!」
影の動きがぴたりと止まった。顔をこちらに向けたのだろう、夕闇の中で表情までは分からない。
「ノブ」
もう一度声をかけると、影はこちらに向かって一直線に駆け寄って来た。
「神さん……」
ハァハァと息が上がっている。
「信長、一緒に帰ろう。待ってるから着替えておいで」



数分でやってきた清田は慌てて着替えたのだろう、髪もまだ汗で濡れている。
「慌てなくてもよかったのに、ちゃんと拭かないと風邪ひくぞ」
「へーきっス」
首にかけられたタオルに手を伸ばすと抗う素振りをみせたが、駄目だよと言い聞かせて神は丁寧に頭を拭いてやった。
「……スンマセン」
「どういたしまして。 久しぶりだから歩く? それとも乗りたい?」
自転車を指さすと清田は首を横に振る。

進級して上級生の立場になった清田は、以前に比べてやんちゃぶりが影をひそめ、最近では黙々と練習を積む姿を見かけるようになった。
久しぶりに並んで歩けば、去年までは始終一緒に過ごしていた後輩がなんだか大人になったようにも思う。背も少し伸びただろうか?
「ノブ、ここ最近ずいぶん頑張ってるから黙って見てたんだけど……ちょっと頑張りすぎ? ちゃんと調整入れてトレーニングしないと……」
「あ…」
「ノブはさ、すごくいいバネ持ってるんだからそれは大切にしないと。膝とか壊したら元も子もないよ」
清田は頷いたのかうつむいたのかわからないように首を落とした。
そのまま二人分の足音だけを聞きながら黙って歩き続ける。
「今日は無口だね。お腹空いちゃった?」
冗談めかして言ってみても乗ってくる気配もない、しばらくしてぽつりと清田が口を開いた。

「神さん、俺……わかんないッス」
「ん? 何が?」
「俺、なんか足りないンすかね」
神は黙って次の言葉を待っている。
「牧さんたちがいなくなって、神さんと二人で最強コンビになってやるんだって思ってて、そンでも遠藤サンとか、篠サンとか去年まではベンチだった先輩にも実はすげー上手い人がぞろぞろしてて、やっぱ層が厚いってか…… そーすっとオレはなんで今までコートに入れてたんかなぁって思って……」
昨年一年、清田は自分とチームの中の下級生二人で牧たち三年生に遅れをとるまいと躍起になっていた。獲得した己のポジションを守りたくて自分自身も必死だった神には、一年生の清田がどれほど頑張っていたかも容易く想像できる。
「自信、なくなったってこと?」
「オレは誰にも負けないッスよ!」
決意のように言い放れた言葉はかつて自分も口にしていた。あの時のように胸をギリギリと締め付ける切迫感はなくなっても、この気持ち失っては戦えない。
「ノブはいいプレーヤーだと思うよ。 それに俺とノブはいいコンビだと思うけど、それじゃ駄目なの?」
「そういうんじゃ……」
「こんなことわかってると思うけど、バスケはコンビでするもんじゃないだろ?」
「まあ……」
「五人でするんでもない」
「え?」
やっと顔を上げた清田に、自分も考えをまとめるように神は話し始めた。
「あのさ……三年になると進学のこととか現実的になるし、周りにもそういう話題が増えるだろ? そうすると必然的にその先のことも連想することになる。いつまでバスケをやっていられるかなって、この前初めて考えた」
「神さん」
「大学でやってプロになって、その先もずっとバスケを続けていけるのは本当に一握りの人間だけだけどね……だけど俺はまだ止める気なんかないよ。上手くなりたい、もっと高く飛びたいし、もっと早く動けるようになりたい」
清田の首もつられて縦に動いている。

「遠回りしようか。もうちょっと話したいからさ」
「え? あ」
気が付けば、いつもならそこで別れる交差点に来ていた。
答えを待たずに神は歩き始める、あわてて清田も後を追った。
「信長と二人で話すの久しぶりだよね」
「……はァ」
「最近大人しいね」
清田はどう返したらいいかわからないまま、ただ遅れないように歩調をあわせる。
「ねえノブ……バスケ楽しい?」
「え?」
何を言われたのかわからなかった。何が楽しいって? バスケは自分にとってなくてはならないもので……でも楽しいってのとはちょっと違う。
「俺は最近すごく楽しい。ノブは……ちょっとだけ辛そうに見えるよ」
「全然、辛いなんてコトないッス!」
即座に言い返すと神は肯いた。
「ならいいけどさ。ねぇノブ、監督や牧さんや、それから岡崎さんも…あ、俺が一年の時のキャプテンね、みんなが何かにつけて言ってたことがあるんだけど、わかる?」
いきなりの質問に清田は口籠ってしまう。
「ハイ、5秒以内に答え」
「えっ?」
「4、3、2」
「え、っと……」
「時間切れ~」
神は楽しそうに笑っている。

こんな気分は久し振りだ。
この人は、何て言うんだろう…… 神と一緒にいると気持ちの尖がってる部分がぽろぽろとはがれていく。
三年になってキャプテンになって、今までより遠い存在になってしまっても自分はやっぱりこの人の隣にいたいと思う。
でもなー……
ライバル、多いんだよ……
去年まで気づかなかった。神さんこんなにトモダチいたっけか?
三年でびっちし神さんの周りガードしてんじゃね?と思えるほど二人っきりになる機会がなくなった。
遠藤さんが世話焼きだしなー
神さんも平気で焼かれてるしなー
もー……

はーーーっ
大きな溜め息が出た。
「……そんなに残念がらなくても」
「え、ああ… なんスか?答え」
神は少し清田を見つめ、ゆっくりと言葉を発した。
「バスケはコートの中だけでやってるんじゃない、って」
「あー」
その言葉には聞き覚えがある。
「俺ね、正直そんな話はキレイ事だと思ってた。コートに入れなければ意味なんかないって……ノブも、そうだよね?」
ニヤリと笑われ、隠す必要のない本心を答える。
「もちろん。試合に出られなきゃ意味ないっしょ?」
同意を求めて顔を見ても答えてくれない神に、わずかに不安が生じる。
「違います、か?」
「ううん、違わないよ。結局は出場メンバーなんだけど……でもバスケに限らずスポーツってさ、思ってる以上にメンタルな部分があって、ちょっとした調子の良し悪しなんてのはその辺が原因だったりするんだよね。で、その「ちょっとした」って部分が以外と勝敗を分けたりする。 ……俺この前の練習試合の時にね、ベンチとか観客席からのパワーを感じて、全員でやるっていう感覚がなんとなくわかった。こんなのは初めて、かな」
「パワーは……感じるけど」
「うん ……感じるだけじゃなくて貰うっていうか…… 吸収して、それが自分の力にプラスされる感じ」
その感覚は清田にはわからない。コートで頼るべきは自分自身と、それとコートに入っているメンバーではないのか?
怪訝そうな顔を見て、神は続けた。
「去年までは俺も、そこに下級生がいるから単に面倒を見るだけって感じでさ、その日の練習課題ができてもできなくても、それは個人の問題だから干渉なんてしなかった。できないことが積み重なって最終的に落ちこぼれても、それだって自分の責任だから、試合に出たかったら人のやってる以上のことをして勝ち取ればいいって……思ってたよ」
「はぁ」
「でも、試合に出られるから良し、メンバーに入れないから負けだって区別するのはどうも違うみたいだってことに最近気づいた」
「だって……出られなきゃナンも……」
わかるような、でもやっぱりわからないような……考えることを放棄したくなる。
「人は人なり、なんだよね。その人の到達点はその人のもので、試合に出られる出られないって言うのは俺の基準でしかないって気づいた。そりゃあ海南のバスケ部に来る連中なら皆そこそこの意識は持ってるだろうけど、それでも単純にバスケが楽しいって感覚が、実は一番大切なんじゃないかと思うんだ…… 辛い気持ちはパワーにはならない。それぞれの達成感が自信とか気持ちの充実に繋がって、その気持ちが相乗効果で全員の力になる……う~ん、上手く言えないけど」
陽はすっかり落ちて辺りが夕闇に包まれても、神の穏やかな横顔だけが輝いて見える。
清田の心臓はにわかに踊り始めた。

……神さんが好きだ! やっぱスゲー好きだ……
どうすれば自分の気持ちが伝わるのか……ここはハッキリ言うっきゃないのか!?
笑われたら? そんなコト考えてる場合か!?
一言。
言え!オレ!

「神さん、すっげカッコイイ…… 俺…オレ…好きッス!!」
「え? ノブにそんなこと言われたら照れるな……偉そうだった?」
はにかむような顔がたまらない。
でも肝心な部分は流された、っぽい……
「……神さん」
「ん?」
「あー……」
「ん?」
「えーと……ですね」
「なに?」
言い淀んでいるうちに、ぐるりと一周して再び交差点に出てしまった。
立ち止まり、神は清田の顔を見る。
「うー…… 上手く言えないんスけどっ」
「うん」
「神さん…キャプテンだなぁって。らしくなったっつーか」
大きな眼が驚いたように見開かれた。
え?この反応って……地雷か?
「スンマセン!ナマイキ言って」
慌ててペコリと頭を下げてみても言葉がない。
……怒ってない、よな? そーっと顔を上げて視線が合うと、神の口元が綻んだ。
「……ありがとう。なんかすごく嬉しかった今の言葉」
「神さん……」
「ノブに言われたってことが、嬉しかった」

おー、グッジョブ俺!! ここでもう一言!こう……グッとくる一言! だけど何言えばイイのか全然わかんねー。

見つめるだけの清田に手を伸ばして好き勝手に跳ねている髪を撫でつけてから、神は自転車に跨った。
「乗んなよ、送ってく」
「……い、いいッスよ」
「送る。乗れってば」



小さく動く肩、慣れた位置に立って腕で感じる布越しの体温は、はっきり言って毒だ。気を紛らわせるように清田は話し続ける。
「神さーん」
「んー?」
「でもー、あんなこと言っても、神さんの練習計画ってキツくないっすか?」
「あれは……だってさ、皆に意見聞くと本当にバラバラだから」
「みんなってー?」
「スタメン三年の意見。小菅はあの通り優しいからラインは少し下に引いてそれ以上は自主練でって言うし、篠井は練習は修行だからもっと厳しくしろってどっかの修験道みたいなこと言うし、遠藤は参加すりゃ判子ポンだろって……ラジオ体操じゃないっての。だから俺が大まかに決めて監督に相談してるんだよ? ノブでもキツイ?」
「全っ然!!! よゆーッス」
勢い込んで答えると、神はあははと笑い声を上げた。

二人きりのこんな時間が永遠に続けばいいと本当に思う。
でも来年は、大好きなこの人はもういないのだ。
「………神さんもそうでした?」
「なにー?」
「神さんもー、去年ー、来年は牧さんと一緒にいられないって思ってー、寂しかったッスかー?」
答えを貰わないうちに家が見えてくる、諦めたように飛び降りた清田に神は言った。
「ノブは? 寂しい?」
「そりゃア……」
「三年なんて短いね……」
コクリと頷く清田の顔を、神は覗き込む。
「でも終りじゃないし、だろ? 例えば大学は違ったとしてもノブとは付き合っていきたいしさ」
「ホントに!?」
「うん」
瞬時に清田の顔がパァっと輝く。わかりやすい反応につられて神も笑っていた。
「じゃ帰るね」
「うッス  ……神さん!」
呼び止められて神が振り返る。
「ありがとうございました」
「ノブ、また明日ね」
ペダルを踏み込む音を耳が捉えて笑顔が離れていく。自転車はあっという間に見えなくなってしまった。
神の姿を追いかけるように清田はしばらくその場に立ちつくしていたが、やがて溜め息ひとつ、大きく伸びをしてから家に向かう。
ふと見上げた空には、まん丸な月がきれいに輝いていた。








2009/01/22
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My文章では弟気質のジンジンも
ノブに対してだけは保護者ヅラしまくりです(笑)
ノブっていいですよね~vv
オトコノコって感じのまっすぐさが眩しいですよ
年寄りくさいコメントでドウモm(_ _;)m




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